「あたらしくて、おもしろい」金融事業の鍵は“DX”。デジタルの力で慣習を変える「本当の価値」(#LXエモカレ)
LayerXで働く人たちの心のうちに迫る「LayerXエモカレ」。今回は、三井物産らとの合弁会社「三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社(以下、MDM)」エンジニアリング部の武市融紀(たけいち ゆうき/ 通称:tacke)にインタビュー。
効率的なファンド運営の実現のため、「Operation Digital Transformation」と呼ばれるデジタルの力を活用した業務効率化に取り組む武市。
「DXを担当するエンジニアも、物件の運用業務をしてみたらどうか」というMDM代表取締役の上野の提案で、システム開発だけでなくアセットマネジメント業務も経験するなど、「MDMでなければできない経験」を重ねてきました。そんな彼が考える金融DXの可能性とは?
新しい技術で「重たい」経済領域を変えたい。LayerX入社の経緯
——武市さんはLayerXの初期から在籍していらっしゃるとのこと。入社のきっかけは何だったのでしょうか?
元々は株式会社mixiの子会社で『nohana』というtoCサービスに携わっていました。エンジニアが10人にも満たない小さな組織ではありましたが、最終的には転籍をして株式会社ノハナのCTOとして開発組織のマネジメントやプロダクトの設計などを行っていました。
転機となったのは、ノハナがMBOしたことです。CTOとして会社のファイナンスに触れる機会が増え、金融に関する知識が深まっていきました。その経験を通して次第に、Fintechのような「重たい」産業やビジネスの領域に携わりたいと思うようになったんです。
——なぜLayerXに?
LayerXのことはブロックチェーンの会社として認知していました。研究開発的なことをやるというより、新しい技術をいかに社会実装できるのかを事業を通して実証しようとしているLayerXのスタンスにとても共感して。福島さんをはじめ、所属しているメンバーからも本気で事業を成功させたいという気持ちが伝わってきたことが大きかったなと思います。
今はピボットをしてブロックチェーン事業は行っていませんが、当時から今のLayerXのミッションである「すべての経済活動をデジタル化する」という思いは変わっていないなと感じますね。
複雑なアセットマネジメント業務を構造から効率化するために
——入社後、比較的すぐMDMに配属されていますが、当時はどのような業務を担われていたのでしょうか。
当時は、法人投資家向けの私募ファンドを販売するプラットフォームの企画開発に携わっていました。個人投資家向けの資産運用サービス「ALTERNA(オルタナ)」がローンチされるずっと前のことですね。
それから、アセットマネジメント業務の効率化に業務の軸足が移っていきました。アセットマネジメント(AM)業務とプロパティマネジメント(PM)業務の構造的な関係性を変えたいという、(MDM代表取締役社長の)上野さんの強い思いから始まったプロジェクトです。
——具体的にはどのようなことを行っているのでしょうか?
物件を運用する際、AMとPMはさまざまな情報のやり取りをします。入居申込や家賃収入、契約情報など、物件管理にまつわる情報をPMからAMに報告したり、稟議を上げたりし、AMはそれに対して承認したり、指示を出したりするようなイメージです。
中には専門的な知識や資格が必要なものもありますが、いわゆる事務作業も多くて。これまでは基本的には全部メールでPDFやエクセルファイルをやり取りすることが慣習でした。
必要なファイルやデータをPM側が作り、AM側がチェックをする。作るのも確認するのも人なので、当然100%完璧に行うのには限界があります。それをデジタルの力で変えたいというのが取り組みの背景です。
最初はAM業務のこともPM業務のこともよくわからなかったので、社内外の人に話を聞いて、一番必要でベースとなる機能は何かを探すことから始めました。「詳しいことはわからないけど、困っている人がいるならやるしかない」というのが、当時の率直な気持ちでしたね(笑)
物件の運用業務の実務を通して掴んだ「業務効率化」の真のやりがい
——新しい業務の仕組みを作っている手応えは感じていますか?
一番最初にリリースした時には社内からも業務が楽になったという反応があって、すごく喜んでもらえた実感がありました。ただ、その後はなかなか大きな機能をリリースすることができない、仕込みのような時期が続いて。ちょうどこの半年で、それぞれの機能を連動して使えるようになったことで、少しずつ業務効率が上がってきたかなという感じです。
僕自身にとって、昨年(2023年)の9月ごろにひとつのターニングポイントがありました。それが「DXを担当するエンジニアも、物件の運用業務をやってみてはどうか」という上野さんからの突然の提案です。もちろん金融のプロフェッショナルであるAMメンバーと一緒に行うのですが、こういうチャレンジができるのもMDMならではだと思います。
実際の運用業務をやることによって、ヒアリングだけでは分からなかったことや、断片的な知識がどんどん繋がっていって。社内のSlackのやり取り、社外とのメール、そこに添付さえているファイルを自分で触ることで、一気に解像度が上がり、金融DXの面白さに本当の意味で気付けたように思います。
時間はかかっても成果を出すことにこだわり続けられるか
——金融DXを担うチームに向いている人はどういう方だと思いますか?
金融や運用業務は基本的に複雑です。慣習としてそうなっている部分もありますが、好きで複雑にしているわけではなく、さまざまな要因や理由がちゃんとあるんですよね。それを効率化するためには、今の業務のあり方を一つひとつ紐解き、論理的に整理しながら考える根気強さが求められるように思います。
本音を言えば、もっとクイックにいろんな機能や仕組みを作りたいですけど(笑)。一つの大玉の機能をリリースするのに1クオーターくらいはかかってしまうような仕事なので、粘り強く成果を生み出すことに楽しみを見出せる方はフィットするんじゃないかなと思います。マニアックな世界ですが、他では絶対に味わえないことがたくさんあるので。
——MDMで働く面白さはどういうところに感じますか。
最近、「MDMってアメリカみたいだな」って思うんですよ。toCのプロダクトで新しいものをガンガン作っていこうという“西海岸的”な文化を持っているのがオルタナチーム。一方、金融のスペシャリストや不動産運用のスペシャリストがしっかりと堅実に業務を行う“東海岸的”な雰囲気がアセットマネジメント部やデジタル投資銀行部にはあって。
一見すると相反するような文化や空気が共存しているのがMDMの面白味だと感じています。
これまでの慣習を変え、業界全体に新しい風を吹かせる。金融DXの可能性
——今後の展望を聞かせてください。
MDMのユニークさは、商品の組成から運用、販売までを一貫して行っているところです。今はまだDXチームの取り組みはAM業務が主ですが、投資家のみなさまにより利益を還元するためには、証券業務やファンドを組成するところの効率化も必要になってきます。MDMが持つ価値や可能性を最大化させるための下支えをDXチームが担えるようになることが展望のひとつですね。
AI・LLMもDX業務と相性がとても良いんです。例えば、公募ファンドの契約書。ひとつのファンドを組成するためには、大体70もの契約書が必要になります。短いものだと数ページですが、長いものだと100ページを越えるものも。それらを一つひとつ、人の手で作成しているのが現状です。こういった「知的単純作業」と呼べるものにAI・LLMの技術が活用できると、業務効率化が更に進むと考えています。
もっと先の未来には、世の中にある不動産などの情報を集めてきて、それらが販売に値するかどうかをAIが判定するなど、今は人間の知識と経験に拠っている領域を自動化できると、もっといろんな商品を提供できるようになるかもしれない。
そんな新しい取り組みをMDMが先陣を切ってやることで、金融業界も変わっていく可能性もあります。MDM自身の成長にも寄与し、業界にもインパクトを与えられる可能性がある。それが金融DXの醍醐味だと思います。
とは言え、まだまだやっとスタート地点に立ったくらいなので、やることは山ほどあります。じっくりロジカルに複雑な課題を一緒に解いてくれる仲間を増やしていきたいですね。
デジタルの力で金融業界の常識を変えていく仲間を募集しています
複雑な金融領域の業務をデジタルの力で効率化し、新しい投資のあり方を作りませんか?まずはカジュアル面談でお話ししましょう。