“本当に”使いやすいプロダクトとは。バクラク事業部CTOが目指す「愛のある」ものづくり(#LXエモカレ)
LayerXで働く人たちの心のうちに迫る「LayerXエモカレ」(LayerX Emoi Okimochi Calendar)。第2回は、LayerXの創業メンバーのひとりである事業部執行役員(CTO/CPO)の榎本悠介。(※2023年7月時点の肩書です)
LayerXがブロックチェーン事業からSaaS事業にピボットを決めたとき「正直、不安だった」と話す榎本が今、プロダクト開発で大切にしていることとは。創業から現在に至るまでの間でLayerXの変わっていない部分、逆に変わった部分を振り返ってもらいました。
ブロックチェーンは「向いていない」。ピボットの裏側
——榎本さんは、LayerXの立ち上げメンバーです。改めて、創業当時のことを教えてください。
創業当時、LayerXはブロックチェーンを活用した事業を展開していました。僕自身、ブロックチェーンに関してはとても面白い技術だと純粋に思っています。ブロックチェーンに関する論文を読んだとき、「数式に裏打ちされたものから、時価総額10兆円規模の市場が生まれている」ことに驚きを覚えたと同時に、「こんなに数学的、技術的に美しい世界があるんだ」と可能性に魅せられたんです。
ブロックチェーンという新しい技術、なおかつ自分自身が感動できる技術を使って、新しいことに取り組める環境にワクワクしていました。
創業から2〜3年は、ブロックチェーン技術を社会実装することに賭けて、あの手この手で“事業のタネ”を見つけては、試行錯誤を繰り返しました。そうするうちに、段々とみんな向いていないことをやっていることに気づき始めたんです。
——「向いていない」とはどういうことでしょうか。
ブロックチェーン事業の後半は、技術を社会実装することをモチベーションに進めていました。そのころには、LayerXのミッションも「すべての経済活動をデジタル化する。」と定まっていて、ちゃんと多くの人が使えるものを作りたいとみんなが思っていたんです。ですが、プロジェクト遂行のために各種調整やコンサルのようなことが求められる面もあり、自分たちの得意とするプロダクト開発に向き合うことが難しかった。
それに加えて、経済活動のデジタル化はもっと足元の部分からやらないといけないんじゃないか、ということも見えてきました。そこで、改めてミッションに立ち返ったり、自分たちの強みは何かを考えたりして、SaaSやアセットマネジメントのデジタル化やプライバシーテックなど、今のLayerXの事業体に大きく舵を切りました。
——ピボットすると決まったときは、どういう思いでしたか?
自分たちがやってきたことに対する自負はあったので、申し訳なさと悔しさはありましたね。でも、ピボットしたほうがLayerXらしいし、事業としてもうまくいく可能性を感じたので、「やるしかないな」と。とはいえ、作るものも何も見えていなかったので、正直不安もあったのは事実です。
ユーザーの要望の裏側を想像し、シンプルに解決することが「使いやすさ」につながる
——それからバクラクシリーズなどを開発してきて、印象に残っていることはなんですか。
いろいろありますが、一番嬉しかったのは「バクラク申請」「バクラク経費精算」をリリースして、お客様に喜んでもらえたときです。レッドオーシャンの領域だったこともあり、実は社内では反対意見も多かったんです。だけど、自分自身がペインを感じていた領域だったので、「事業として成り立つかはわからないけど、とにかくやるべきだ」と当初から話をしていました。
絶対に使いやすいものを作ることにコミットしてリリースした結果、今では「申請」と「経費精算」が「バクラク」シリーズの主軸になるまで成長したことは、本当に嬉しいです。
——今はどういうプロジェクトを進めているんでしょうか。
請求書発行のプロダクトを作っているところです。市場にはすでに競合のプロダクトがたくさんあるので簡単ではありませんが、ワークフロー(申請)のときと同じように、良いものを作りきったら、ちゃんとお客様に届くのではないかと感じています。
請求書発行・受領の両面をカバーすることで、究極的には請求書PDFもなくせるかもしれないと思っています。請求書をPDF化して送付し、受け取った側はそれをOCRで読み込んで保存するという、業務フローはよく考えると非効率ですよね。発行側のプロダクトを作ることで、お客様がもっと便利に、もっと効率的に仕事ができるようになってほしいという思いで、今はプロダクト開発に取り組んでいます。
——お客様の「使いやすさ」を実現するために意識していることはありますか?
まずはやっぱり、たくさんのプロダクトを触ることが大事だと思っています。良い体験のタネや「使いやすさ」の引き出しを増やすことは意識していますね。
それに加えて、お客様の「本当の気持ち」を察することを大切にしています。「デフォルトでこういう設定をしてほしい」「こういう検索をしたい」など、表層的な要望の裏にある業務フローを想像して、それをシンプルに抽象化することが使いやすさに直結すると思っているんです。
お客様の業務を深く理解した上で、シンプルな機能を作る。「作らない」意思決定も含めて、いかにシンプルに課題を解決するかが使いやすいプロダクトを作ると信じています。
最近、バクラクを導入していただいた経理の方が、社内でMVPを獲った話を聞いたときは嬉しかったですね。経理の仕事は「ちゃんとやって当たり前」と思われがちですが、バクラクを通じて社内の業務効率化に貢献したことが社内で評価されたと知ったときは、作り手冥利に尽きるなと感じました。
こういうケースをもっと生むために、バクラクの業務フローのカバー範囲をどんどん広げ、価値をより多くの人に届けることで、お客様の利便性や業務効率をもっと上げていきたいです。
——プロダクトを作る「開発チーム」とそれを売る「営業チーム」の連携の仕方で工夫していることはありますか?
毎週金曜日に30分間、開発で作ったものをお披露目するレビュー会を行っています。2年以上続いているLayerXのユニークな文化のひとつです。
営業やCS(カスタマーサクセス)チームからプロダクトへの機能要望があげられて、それに対してちゃんと応える、それがまた要望をあげるモチベーションに繋がるという循環が、双方への信頼を生んでいると感じています。
結局、動くものを見ないと適切なフィードバックを出せないし、ちゃんとしたフィードバックを得ないと良いものは作れない。そういう背景から、とにかく「動くもの」ベースで話し合おうという文化がLayerXにはあるんです。
LayerXは学びながら成長し続ける組織
——他にもLayerXで変わらない文化って何かありますか?
行動指針やカルチャーの浸透度合いは変わっていないと感じます。10人くらいのころに作られた行動指針が、200人近い規模になってもずっと根づいているって珍しいと思うんですよね。カルチャーマッチしていて、なおかつスキルのある人やポテンシャルのある人が仲間になってくれているのはすごくありがたいです。
逆に変わった点は、「人を育てる」意識が強くなっていること。昔は、事業を成り立たせるのに精一杯でしたが、今は松本さんや小賀さん、名村さんといった、若い人材をちゃんと育て、社会に貢献するという長い目線でものを考えられる人が増えてきたことが、大きく変わった点だと感じます。
——榎本さんが考える「一緒に働きたい」人はどういう人ですか。
やっぱり自分たちのプロダクトに愛が持てる人ですね。僕が考える「愛」は、内向きな情熱ではなく外向きなベクトル。「このプロダクトを絶対にお客様に届けるんだ」「絶対に作り切るんだ」というモチベーションがある人と一緒にものづくりをしたいなと思います。
それは決して難しいことではなく、プロダクトのなかで自信を持っておすすめできるところをひとつでも見つけられればいいんです。プロダクトのいいところが社内で語り合われると、自然と熱が連鎖していくので。
LayerXの経営陣は業界経験者である“2周目人材”が多く見えるかもしれませんが、みんな1周目の経験を元にするのではなく、リアルタイムに社会情勢や組織の状態を見て、その都度考え、アップデートしています。皆が学びながら成長している組織なので、愛を持って学び続けられる人に出会いたいです。
“本当”に使いやすいプロダクトを一緒に追求する仲間を募集しています
LayerXの開発チームは、営業やCSと連携しながら、お客様の真のニーズに応えるプロダクト開発を行っています。ご興味のある方は、お気軽にカジュアル面談をお申し込みください!