ROXX中嶋氏が語った「営業組織の作り方」と「新規事業立ち上げのポイント」──LX Leadership Night #2イベントレポート
自らの手で事業をドライブし、世の中に新しい価値を創出する方々に「学び、変わる」きっかけを提供する──そんな思いから、LayerXでは新たに「LX(=Learn&transformation)Leadership Night」というイベントコミュニティを企画しました。
同イベントは“社会を変える”スタートアップのリーダーシップメンバーが集うコミュニティを目指しています。イベントの中身の一部はnoteでレポートを掲載する予定ですが、Q&Aセッションを中心にオフラインの場でしか得られない、リーダーたちの失敗などのオフレコ情報を提供することで、仲間との出会いや学びのある場を作っていく予定です。
2024年11月25日に開催された第2回のテーマは「新規事業にトライし続ける意味、再現性のある営業組織の作り方」について。ノンデスクワーカー向け転職プラットフォーム「Zキャリア」やオンライン完結型リファレンス/コンプライアンスチェックサービス「back check」を手がけるROXX代表取締役の中嶋汰朗氏とLayerX代表取締役CEOの福島良典が登壇し、新規事業を立ち上げる際に大事な考え方、再現性のある営業組織の作り方などを語りました。セッションのモデレーターはLayerXの石黒卓弥が務めました。
「決まった行動量を守る」、再現性のある営業組織の作り方
──今日はいくつか話すトピックを持ってきました。まずは「再現性のある営業組織の作り方」についてお二人の考えをお聞きできればと思っています。営業組織をつくる上で苦労した点やこだわった点などあれば、ぜひ教えてください。
中嶋:まず、ROXXの営業組織はめちゃくちゃ細かく数字を管理しています。具体的には日次単位で1人あたりがどれくらい行動するかを決めて、それを徹底するようにしてます。
例えば、アポ数の目標があった場合、それを達成するために1日何件電話をかけなければいけないのか。そしてその行動量を守れたかどうかが大事です。よく質をとるか、量をとるかという話になるのですが、個人的には量の問題でミスをしてきたことが多くて。
だからこそ、会社の文化として目標達成に必要なあらゆる要素を因数分解し、1日の行動目標を細かく定めて、きちんと達成できたかどうかを見るようにしています。達成できていない場合は「なぜ達成できなかったのか」という原因の振り返りも行い、行動の改善につなげているんです。
ROXXが成長できたのは、当たり前のことをやり続けられたからだと思っていて。何もバックグラウンドがない学生時代に創業しており、突出したスキルや専門性があったわけではないからこそ、当たり前のことをやり続けることをすごく大事にしてきました。
過去に組織規模が急成長するフェーズで、「最終的に成果を出せれば、その過程で必ずしも量をこなさなくても良い」というような価値観のメンバーを採用したことをきっかけに、1度、組織が崩壊しかけたことがあります。そういった経験もあり、「決められたことをきちんとやれているのか」は今も細かくチェックするようにしています。
仕事の結果はもちろん外部環境に左右されることもありますが、決まった行動量を守るというのはやるかどうかの話。これはメンバーに言い続けてきて良かったなと思いますね。
福島:自分は「成果を見える化し、サイクルを短くすること」が営業の再現性を圧倒的に高めるための秘訣だと思っています。多くの人は月次や日次で行動の振り返りを行うと思うのですが、時間単位で行動量を達成できているかを確認するんです。
1時間の行動目標を達成していない人は、1日の目標を達成できない可能性が高い。1日の目標を達成できなければ、月次の目標を達成できない可能性が高い。振り返りのサイクルを短くして、いかに早く軌道修正できるかが大事だと思っています。
残りの営業日数が5日しかない状態で目標の達成率が70%と言われてもリカバリーできないですが、最初の週で目標の達成率が70%になる“見込み”がわかれば、リカバリーができる。営業の再現性を高めていくためには、振り返りのサイクルを短くし、いかに早くリカバリーが必要かに気づくことができるかが重要になると思っているんです。
中嶋:BtoBの営業の場合、基本的には月に約20営業日しかないので、毎日5%ずつの進捗がないと目標を達成できないんですよね。当たり前のことを当たり前に確認できる文化にしないといけないですし、その文化が緩いままの組織が成長するわけないなと思いますね。
上場する際も大事なのは、自分たちが立てた計画をきちんと達成できるかどうか。予実管理をできているかどうかがしっかり見られるポイントになるので、そういった点も踏まえて「決められたことをきちんとやり続ける」というのは大事ですね。ROXXはその文化があったので、実は3年くらい予実管理を大きく外したことはないんですよ。
ROXXとLayerXが複数プロダクトを展開する理由
──このトピックだけでまだまだ話が盛り上がれそうなのですが、次のトピックに移らせてください。ROXXとLayerXは複数事業を展開しているという点が共通していますが、どのようなことを意識して事業を展開されているのでしょうか?
中嶋:自分の場合、いろんな先輩たちが上場していく様子を近くで見ていたこともあり、「単一プロダクトで伸び続けていくのは難しいな」と思っていたんです。割と早いタイミングから単一プロダクトのみの提供という考えを捨てて、「新しい事業を作っていくことにチャレンジしていかないと会社が大きくなっていかない」という危機感をずっと抱えていました。
実際に複数のプロダクトを展開してみて、やっぱり1個と2個では全然違うなと感じました。フェーズや時間軸が異なるものが、同じ組織の中に共存しているので、最初は「意味わからん」という感じでしたね(笑)。複数のプロダクトがある状況を早めに経験したことで、時間軸の違いや組織内でどこを共通化すべきかを学べたのは良かったですね。ただ、振り返ってみると、もう少し共通化できる部分はあったなという反省はあります。
福島:新規事業が当たるかどうかはわからない。だからこそ、トライし続けるしかないんですよね。すべてを見通していそうな経営者ですら空振ることもあるわけですから。何が当たるかわからないからこそ、トライし続けていかないといけないですし、その一方で「無理だ」と思ったら潔くやめる判断をすることも大切です。
中嶋:やめるのが上手い、というのが経営ですよね。
福島:新規事業が当たる確率は大体1割くらいなのですが、やめるのが上手いというのはすごく再現性がありますよね。
中嶋:やめるという話をすると、自分は最初のプロダクトでもあるソーシャルヘッドハンティングサービス「SCOUTER」をクローズする意思決定がなかなかできませんでした。資金がなくなるギリギリまで続けたい気持ちもありましたし、見せ方によっては上手くいかせる方法もなくはないなという考えもあって。ただ、今となっては「あそこまで引っ張らなくて良かったんじゃないか」と思いますし、そういうのって社外の方々の方が気づきやすいですよね。
福島:それはありますね。LayerXも初期はブロックチェーン事業をやっており、壮大なピボットをしています。当時、ブロックチェーンの可能性を信じて、みんなで頑張っていたのですがやっぱり苦しいなという思いもあって。それで株主の方たちにピボットすることの説明をしに行ったら、「そうだよね」という反応をもらったので、外の人の方が客観的に見えているんだな、と感じましたね。
中嶋:だからこそ、自分は外部株主の存在がとても大事だなと感じています。経営に客観性を持たせるという意味では、すごくプラスになりましたね。
新規事業の立ち上げは、代表が守ってあげる必要がある
──リソースが乏しいスタートアップが新規事業を立ち上げていくにあたって、どのような体制で進めていくのが良いのでしょうか?
中嶋:スタートアップが十分なリソースを確保できるタイミングなんてほとんど一生来ないですよ(笑)。常にリソースがない中で、どうするかという話ですよね。
福島:兼務はせず、代表がコミットすることが大事かなと思います。1人でもいいので、すごく熱意を持ってすべてのリソースをかける。「既存事業も見ながら、新規事業の立ち上げもやっています」という場合は上手くいかないと思っています。
新規事業って社内の標的になりやすいので、守ってあげないといけない。「こっちは稼いでいるのに、なんでこんなこともできないのか」と思われてしまいがちなので、社長や役員が絶対に守る必要があって、守らない限りは新規事業は立ち上がっていかないですね。
中嶋:全く同じ考えです。やっぱり事業は「誰がやるか」もすごく大事なんだろうなと思っています。同じ事業領域でも上手くいく会社、上手くいかない会社があるので、最初のゼロイチの部分は、本気で取り組める人がいるかどうかが重要ですね。
福島:新規事業の立ち上げに70〜100人も必要なくて、3人いれば十分だと思っていて。リソースの問題によって新規事業が立ち上がらないというのは嘘だと思ってます。上手く立ち上がっていき、追加でリソースが必要になった場合は社長や役員の判断で、人を追加していくべきですが、立ち上げのタイミングは3人いれば十分ですし、それで相当なことができます。
中嶋:人が増えたら出来ることは減っていくんですよね。人が少ない方がスピード感を出せますし、熱量も維持しやすい。30人ほどの規模になったらさまざまな面で濃淡が出てきて、まとまりづらくなっちゃうんですよね。2〜3人の方が早いですし、同じものを信じ続けられる。スタートアップにおいては、人数が少ない方が正義だと思っています。
──それだけの熱量をかけて立ち上げた事業をやめる判断軸はどのように持っておくべきでしょうか?
福島:会社の状況による部分もありますね。ひとつは機械的に基準を設けることです。例えば、半年間で3000万円を使って、このKPIを達成できたら続けて、達成できなかったら撤退する。その基準で判断するのが一番成果が出やすいのかなと思いますね。
もうひとつは、もっと良いものを見つけることですかね。他にないと、どうしてもそこに固執してしまうんですよね。ただ事業は残酷なぐらい伸びるものと残酷なぐらい伸びないものがあって。残酷なほど伸びるものを経験すると、「努力してもどうにもならん」っていうのがわかるようになるんですよね。残酷なくらい伸びる事業を知っておくことも、立ち上げた事業をやめる判断軸を持つことに役立つのかなと思いますね。
中嶋:そこに付け加えるとしたら、再現性のある顧客事例が一つあるかどうかですね。「こういう課題感を抱えている企業に、こういう提案をしたら契約していただける」という軸が見つかれば、あとはそういった企業がどこにいるかを探せばいいだけなので。
違和感を放置せず、厳しいことも言い切ることが必要
──あっという間に終わりの時間になってしまいました。せっかくなので、最後に中嶋さん、福島さんにそれぞれ聞きたいことを聞いてもらって、セッションを終了にできればと思います。福島さん、中嶋さんに何か聞きたいことありますか?
福島:この1年間でした意思決定の中で、良かったものと後悔しているものがあれば教えてください。
中嶋:良かった意思決定は、「上場する」と決めたことですね。やっぱり上場することで会社のフェーズも変わり、見える世界も広がったので、すごく良かったなと思います。
後悔している意思決定は、組織全体のレベルが下がってきていることへの対応を後回しにしてしまったことですね。この1年でありがたいことに100名ほどの新しいメンバーに入社いただいているのですが、なかなか自分が組織に意識を向けられておらず。“当たり前”のレベルが下がりつつあることに薄々気づいてはいたのですが、上場審査の対応などに追われていたこともあり、なかなか厳しいことを厳しく言い切れなかったんですよね。今はそのときのツケがまわってきていて。やっぱり、一瞬の“甘え”が結局、組織の成長を阻むことになるな、と改めて感じましたね。
福島さんにも同じ質問をしてもいいですか?(笑)
福島:この1年間での最良の意思決定は、サイクルを短くしたことです。今までは割と任せるスタイルをとっていて。現場のマネージャーが数字を追っているので、その数字を達成する方法は全て任せるよ、という感じだったんです。営業組織で言えば、30〜50人ぐらいまでの規模感であれば、そのスタイルで割といけてしまうんですよね。
ただ、営業組織が100人くらいの規模感になったら難しいところもあって。「このままのスタイルだと上手くいかないかもしれない」というアラートがありながらも、厳しいことを言えなかった。当時はそのやり方で結果も出ていたので、任せるままにしてしまったんです。
ただ、この半年は目標の未達が続いてしまって。「これはやり方を劇的に変えるしかない」と判断し、このやり方がいいのではないかと思っていたやり方に切り替えたら、きちんと成果が出たので、その意思決定は良かったかなと思っています。
その一方で、昨年は法対応の波があってすごく数字が伸びていたんです。そのタイミングで、もっと先の仕込みをしておくべきだった、と思います。やっぱり会社はカルチャーと仕組みを両立させなければいけないんですけど、法対応の波で事業が好調だったこともあり、カルチャーが強いから300人規模までいけてしまうんだ、という勘違いをしてしまったのはすごく反省してます。その反省もあり、今は仕組みの構築に注力しているところです。
仕組みがないと、カルチャーが壊れてしまうんですよね。本来は伸びているタイミングで切り替えるべきだったなと思いますが、成果が出ている組織に対してどう接するかは自分の中では課題だなと思います。結果が出ているけれど、もっとできる。仕事としてはまだ良くないものがあるときに違和感を持てるかどうかは、気をつけたいポイントだなと思います。
中嶋:違和感を潰していくのは大事ですよね。ROXXがひとつだけやっていて良かったのは、結果が出る出ないはタイミングによってさまざまではありますが、「基本的なルールを守っていなかったら、どれだけ業績が良くても評価しない」と伝えていることです。規律から外れた状態にあるのに、結果を出しているからといって受け入れてしまったら誰もルールを守らなくなってしまうんですよね。「結果が出ているかどうかに関係なく、まずは組織のメンバーとしての立ち振る舞いをちゃんとしよう」というのは社内に繰り返し伝え続けています。
福島:結果が出ていると、どうしても自意識が過剰になってしまいがちなんですよね。結果が出ているときこそ、ルールを守る、トップが謙虚でい続けるのが大事だなと思います。
──終了の時間が来てしまったので、今回はここでセッションを終わりにできればと思います。お二人とも、多岐にわたるお話をしていただき、ありがとうございました!
1月頃を目処に第3回の実施に向けて準備を進めておりますのでご興味をお持ち頂ける方は以下connpassページのメンバーに登録頂き次回開催のアナウンスをお待ちください!
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