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【LayerX × MUFG】お互いが信じられる“ビジョン”を共有する。大手企業との協業を成功に導く要諦

日本全体の生産性向上に貢献する──そんなビジョンの実現に向け、LayerXは2024年10月に三菱UFJ銀行との協業を開始し、法人支出管理を効率化するバクラクシリーズを「バクラク for MUFG」という名称で提供しています。

2024年12月4日に開催されたNewsPicks主催のイベント「Marunouchi Crossing 2024」で、今回の協業の裏側について語るトークセッションが開催されました。

「金融企業が秘めるオープンイノベーションのポテンシャルとは」と題したセッションに、LayerX バクラク事業部 パートナーアライアンス部 部長の鈴木竜太と三菱UFJ銀行 決済企画部 上席調査役の岩崎聖也氏が登壇。モデレーターはユーザベースの平川凌氏が務めました。

同セッションで語られた、協業を進めていくにあたって意識した点、リリース後に得られた成果などの内容をお届けします。

お互いが信じ続けられるビジョンを共有する

──大企業とスタートアップのオープンイノベーションは、想定していた成果を挙げられないケースも多くあります。そうした中、今回の取り組みを進めていく上でお互いに意識されていたポイントは何だったのでしょうか。

鈴木:意識していたポイントは2つあります。まず1つは、「すべての経済活動を、デジタル化する。」というLayerXのミッションの実現を目指すにあたって、絶対に外すことのできないパートナーはどこなのか、を考えました。

私は“四隅戦略”とよく言っているのですが、まさに銀行はミッションの実現に絶対外すことのできないパートナーの1社だと思っていたので、そのトップであるMUFGとの協業はずっと頭の中に思い描いていたんです。

とはいえ、単純に「協業させてください」と言っても取り組みが進むわけではありません。LayerXとMUFGが協業することで、どんなビジョンを叶えていくのか。ここを入念に話し合ったことが、もう1つのポイントです。

お互いが信じ続けられるビジョンを共有しておけば、ボタンの掛け違いによる問題が起きたとしても、最終的にはビジョンに立ち戻ることができる。そうした考えから、今回の取り組みを進めていくにあたって、「日本全体の生産性向上に貢献する」というビジョンを定めました。

岩崎:我々、銀行側としても従来のサービス提供のあり方に課題を感じていたんです。今まで、企業のバックオフィス業務の領域では、お客様のニーズをもとに商品やサービスを紹介する“受動的な提案”はしてきたのですが、銀行側からニーズを掘り起こしていく“能動的な提案”は十分にできていませんでした。

従来のやり方だけでは通用しなくなっていくという考えがある中で、LayerXとの協業の話があったんです。LayerXが提供している法人支出管理などの業務効率化クラウドサービス「バクラク」と、MUFGのサービスを掛け合わせることで新たなシナジーを生み出せるのではないか。LayerXからの話を聞き、そんな考えを持ちました。

三菱UFJ銀行の岩崎聖也氏

例えば、「バクラク請求書受取」というサービスに、MUFGの銀行振込機能を掛け合わせれば、請求書の受領から振込までの体験をシームレスに繋げることができる。より利便性の高い状態を作れるようになると思ったんです。

これはほんの一例ですが、こうした取り組みをすることでMUFGの本業にも絶対に良い影響がある。LayerXとの協業の必要性を丁寧に説明することで行内からの理解を得て、協業を実現させることができました。

いかにモメンタムをつくるか。行内での認知度を高めることが重要

──協業にあたって、LayerXからMUFGに出向しているメンバーもいるそうですね。

鈴木:LayerXからMUFGに1人出向しているメンバーがいます。やっぱりメールやチャットだけではお互いの考えをきちんと伝えきれない部分があるので、オフラインの場で直接会って密なコミュニケーションをとれるメンバーがいるべきだと思い、出向してもらっています。

出向したメンバーはLayerX歴も長いですし、バクラクのことを深く知っている。協業による取り組みを活性化していくためには、事業理解のあるメンバーに行ってもらった方がいいと考え、LayerXとしても踏み込んだ人選をしてMUFGに出向してもらっています。

岩崎:トップセールスの方に出向いただき、すでに大活躍してもらっています。こうした協業を推進していくにあたって、対外的なプレスリリースに加え、銀行内でもポータルで情報発信するなどの一般的な広報アクションは実施するのですが、それだけでは行内での認知を取っていくのは難しいんです。

そのため、LayerXから出向いただいた方と一緒に草の根的に全国の支店をまわりながら「バクラク勉強会」も実施しています。既に100支店ぐらいをまわらせていただき、LayerXとの協業の行内認知度を高めていっているところです。

鈴木:MUFGのような大手企業との協業を進めていくにあたって、大事なのはモメンタムづくりの仕込みを戦略的にやっておくことです。

対外的なプレスリリースが出る前に行内で認知してもらうための仕掛けは意識的にやっていました。とはいえ、それだけで認知度が100%になるというわけではないので、岩崎さんが仰っていたように発表後に勉強会などを開催して、協業に関する理解を深めてもらうための取り組みはやっています。

LayerXの鈴木竜太

プレスリリースが出たタイミングで、協業のことを初めて知るという事態にならないよう事前の仕込みは戦略的にやっておく。発表後は各拠点のキーマンとなる方々と直接会ってリレーションを深めながら協業を推進していくのが重要だと思っています。

一部では成約事例も。サービス連携によるシナジーも創出

──それだけのリソースを投下できるスタートアップはなかなかいないと思います。

鈴木:LayerXのミッションを実現するには、どこのパートナーと組むべきなのか。パートナーアライアンスの軸となる“四隅”はどこかきちんと自分の中で考え、それを経営陣にも伝えて合意形成がとれているので、一定のリソースを投下できています。

もちろん、LayerXもスタートアップですので、上手くいかなければ立ち行かなくなってしまう。きちんと成果を出すためにも、リソースを投じてコミットしています。

──金融機関との協業を推進していく上で必要な心構えは何かありますか?

鈴木:先ほども言ったことにありますが、お客様へのアプローチよりも行内の認知度を高めることに注力することが大事になります。

発表前の事前の仕掛けとして、経済ビジネスの媒体にトップ同士のインタビュー記事も展開したのですが、記事の内容は行内の方にも興味を持ってもらえるものに仕立てました。

まずは行内の方々に協業に興味を持ってもらい、その後にお客様に興味を持ってもらえるようにする。協業開始の初期段階は発信するメッセージを行内向けにチューニングしていたので、今後はお客様向けにチューニングし、メッセージを発信していかなければいけないと思っています。

その他については、丁寧にITの知識やバクラクの説明をしていったほか、協業することで将来どうなっていくかも説明していきました。具体的には、バクラクに蓄積されたデータを活用することで、金融機関も新たなサービスがつくれるようになるといった内容です。そうした部分を最初から丁寧に伝えていくことが重要になると思います。

──リリース後の手応えはいかがですか。

岩崎:お客様にバクラクの価値を届けていく、という点に関してはお客様からの反応も非常に良く、短期間で想定以上のリードが生まれているほか、一部ではすでに成約の事例も生まれているほどです。初速としては非常に良いスタートが切れたと思っています。

また、「バクラク for MUFG」をお客様に提案させていただくことで、バックオフィス業務の体制・課題などもヒアリングできるようになり、その話をきっかけに銀行の決済サービスの導入ニーズを掘り起こすことにつながるなどの効果も出ています。LayerXとの協業によって、非常に良いシナジーが生み出せているという実感があります。

また、MUFGの提供する法人カードの利用明細データをLayerXが提供する「バクラク経費精算」に連携させる取り組みも始まっています。サービス連携も段階的に進んでおり、今後さらにシナジーを生み出していけると思っているところです。

──最後に今後、お互いが目指していくものを教えてください。

鈴木:まずはMUFGと一緒になって「日本全体の生産性向上に貢献する」というビジョンの実現を目指していきます。その上で、この協業はバクラクを導入いただく会社数が増えることも重要な指標ではありますが、それ以上に導入企業が増えることによって得られるデータの数が非常に重要な指標になる。それによって、次の打ち手が見えてきます。今後は得られたデータをもとに具体的に何をしていくのかをMUFGと話をし、早いタイミングで次の取り組みに向けたアクションを進めていきたいです。

岩崎:バクラクの価値をお客様に届ける、価値の提供先を広げていくというのは、引き続き注力していきます。それに加えて、LayerXのサービスとMUFGのサービスを連動させながら、新しい付加価値を生み出していく。そういった取り組みも進めていきながら、「日本全体の生産性向上に貢献する」というビジョンの実現を目指していきます。


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