【イベントレポート】Sansan、SmartHR、LayerXの営業責任者とマネージャーが語った、営業組織の魅力と伸びしろ
11月11日、LayerXオフィスにて「責任者&マネージャーが語る 営業組織の魅力と伸びしろ」と題したイベントを開催しました。Sansan、SmartHR、LayerXの営業責任者とマネージャーから見た、営業組織の魅力と伸びしろとは。イベントの内容をまとめました。
全員が苦労したドメインキャッチアップと各社のオンボの工夫
前半のセッションではマネージャーの藤田さん、黒川さん、納谷さんの3人が登壇。自社の営業組織などを語りました。最初のテーマは「ドメインキャッチアップ」について。法人の支出管理、労務管理とタレントマネジメント、営業DXというドメイン知識を、それぞれのマネージャーはどのようにキャッチアップしていったのでしょうか。
LayerXの納谷さんは「入社当初は経理業務に関する知識が全くなかった」と言い、「情報のキャッチアップは思っていたよりも大変だった」と振り返ります。とはいえ、普段の業務において経費精算などをすることから、まずは自分にとって身近な領域から少しずつキャッチアップを進め、ドメイン知識を深めていったと言います。
「これまでは属人的に進めている部分があったのですが、今は入社後のオンボーディングも仕組み化を進めています。なるべく早くドメインキャッチアップを完了し、売れる営業としての育成の再現性を高めるために教科書のようなプレイブックも用意しています」(納谷)
SmartHRの黒川さんも同様にドメインキャッチアップには「苦労した」と言います。
「労務の領域は法律が絡んでくるので、きちんと情報を覚えなければいけません。その一方で、タレントマネジメントの領域は各社各様の部分があり、明確な正解がない。性質の異なる2つのことを覚えなければいけないのは大変でしたね」(黒川)
また、Sansanの藤田さんは“営業DX”という領域特有の難しさを軸に、ドメインキャッチアップの大変さについて、つぎのように語りました。
「Sansanを単なる“名刺管理”ではなく、名刺管理によって構築できる顧客情報の重要性をいかに語れるかが大事になっています。業種業態問わず、さまざまな役職の方とお会いさせていただく中で、営業DXとしての可能性を理解してもらうためには、業種業態ごとの知識・課題のインプットや役職ごとのKPIの把握など、情報のキャッチアップがすごく大変だと思います」(藤田)
そういった背景も踏まえ、SansanではLayerXと同様にプレイブックといったものを用意しているほか、トップセールスのノウハウを型化した“営業虎の巻”といったものをつくり、営業のオンボーディング体制の整備にも力を入れているとのことです。
活躍する営業メンバーの特徴と、組織で成果を出すための取り組み
次のテーマは「活躍している営業メンバーの特徴」について。黒川さんと藤田さんの2人が活躍している営業の特徴として挙げていた共通点が「素直さ」です。
「SaaS領域は自社・競合のプロダクトを含めてアップデートのスピードが早く、トレンドの移り変わりも激しいです。それにあわせて売り方も適宜アップデートさせていかなければいけません。今までのやり方に固執せず、思考を常にアンラーニングするという意味でも、素直さがある人が営業として活躍できると思います」(黒川)
「素直さはすごく大事ですね。これまでのキャリアでいろんな経験を積まれていると思いますが、それでも分からないことは分からないと言えるか。それに加えて、行動力のある人がSansanでは活躍している人材の特徴かなと思います」(藤田)
納谷さんも「素直さ」は重要であると語りつつ、それと同じくらい重要なものとして挙げたのが「コミュニケーション力」です。
「良いプロダクトであればあるほど、営業する時に『絶対導入した方がいいのに!』という気持ちになってしまいがちですが、それでは全然ダメで。大事なのはお客様の業務内容をきちんと理解した上で、対話を通して課題を把握することです。当たり前と思われるかもしれないですが、きちんとコミュニケーションを取れるかどうかは、初動の立ち上がりや継続的な成果に繋げていく上でもすごく大事だと思っています」(納谷)
その一方で、誰もが成果をあげられるようにするための工夫も3社それぞれ実施していると言います。Sansanが取り組んでいるのは、成功と失敗の共有です。
「営業の型化を進めていくべく、各チームごとに成功と失敗は共有するようにしています。いい人の真似は積極的に取り入れるようにしていき、一方で失敗に関しては反面教師として同じ失敗を繰り返さないようにする。そうやってノウハウを社内に還元していくことで、誰もが“良い営業”になれるための環境づくりに取り組んでいます」(藤田)
LayerXでもそうした成功と失敗の共有会や勉強会に取り組んでいる一方で、直近で何よりも注力しているのが「テクノロジーの活用」だと言います。
「LayerXではAIが商談内容を評価してくれる『Sales Potral』というツールを内製で開発しています。商談が終わったら自動で連携されて、AIがフィードバックをくれるんです。それをもとに、マネージャーが伸びしろがある部分をフィードバックしていくというプロセスが少しずつ出来上がっており、以前よりも成果をあげやすい環境になっていると思います」(納谷)
SmartHRでは、マネージャーがチームメンバーの得意、不得意を細かく把握するために商談の録画を見て、特性を把握するといったことにも取り組んでいるそうです。
「チームが組成されてから最初の1〜2ヶ月はメンバーのスキルを把握するために、商談の録画データを全部見て得意、不得意を洗い出した上で、関わり方を決めていくマネージャーもいます。そこがマネジメントにおける差分になってきていると思います」(黒川)
マネージャーから見た、Sansan・SmartHR・LayerXの営業組織の面白さ
前半のセッションでは最後にマネージャー視点から、それぞれの営業組織の面白さについて語られました。どういった部分に営業としての面白さがあるのでしょうか。
「Sansanの営業組織の面白さ、特にSMB領域に限って言えば、受注までのリードタイムが非常に短くPDCAを回しやすいところが挙げられます。そのためいろんなチャレンジができるのは、営業として面白い部分だと思います」(藤田)
「飽きが来ないのが面白さだと思います。この領域はプロダクトの数もどんどん増えますし、アップデートのスピードも速いです。また事業領域も拡張していくので、常に情報をキャッチアップし続けていかないといけません。ずっと同じセールストークでずっと同じ売り方が続くことはないですし、また組織の形が変わって1人目のセールスとして事業立ち上げに関わるチャンスもあるので、本当に飽きが来ないと思います」(黒川)
「開発側との距離が非常に近いのが、LayerXの面白さです。例えば、商談でお客様から『こういう機能があった方が業務が楽になる』という要望をいただいた際、開発側と連携して必要であればすぐに機能の開発が進んでいきます。2週間後にはリリースすることもあるくらいのスピード感が魅力的ですし、最近はAIの活用にも注力しています。営業にもどんどんテクノロジーを活用しているのが、LayerXの大きな特徴です」(納谷)
営業責任者が語った、自社の営業組織の特徴
後半のセッションでは、営業責任者の視点からそれぞれの営業組織、そして今後目指していきたい営業のあり方などが語られました。これまでのキャリアでさまざま経験を積んできた中島さん、黒川さん、上堀さんの3人には現在の営業組織はどう見えているのでしょうか。
上堀さんはリクルートグループでの営業経験を振り返りながら、LayerXの営業にもテクノロジーを積極的に活用していく姿勢に「感動した」と言います。
「10年ほど前にリクルートグループで働いていた頃は時代背景やチームのミッション実現のためもあり、とにかく電話するというような営業をしていました(笑)。LayerXに入ってから、営業が困っていることに対してテクノロジーを活用し、商談をAIが評価してくれる『Sales Portal』のようなツールも開発してくれました。テクノロジーを活用して営業の生産性をどんどん向上させていく文化には、すごく感動しましたね」(上堀)
黒川さんは入社から5年が経ち、組織規模が1200人を超えたフェーズでも「誠実な人が多い」という文化が変わっていないことがSmartHRの営業組織の良さだと言います。
「SmartHRにはできないことを『できる』と言ってしまうような、変な売り方をする営業が全くいないんですよね。100人規模のフェーズで入社したときにそう思ったのですが、5年が経って1200人規模になってもその思いは変わらないので、すごいなと思います。誠実な人が多いのがSmartHRの特徴ですね」(黒川)
一方、中島さんからはSansanにおける営業としてのスタンスが語られました。「いかにエッジを立たせられるか」が営業において重要である、と中島さんは言います。
「Sansanとして、営業のベースラインの標準化には取り組んでいますが、その一方で営業としてエッジを立たせられるかも非常に重要です。例えば、とある営業はSansanの話を一切することなく、10回ほどお客様とゴルフに行っていたら、数百万円規模の案件を受注してきた、ということもあります。Sansan自体、プロダクトを通して人と人との繋がりの重要性を説いているからこそ、今買ってもらうのではなく、人との繋がりを深めることに時間を使う。そういった積み重ねを大事にしていき、営業としてエッジを立たせていくことも大事なことなのではないか、と思っています」(中島)
テクノロジーの活用は必須? 3社が目指す「営業2.0」のあり方
上場企業のSansan、レイターステージのSmartHR、グロースステージのLayerX。それぞれ組織の立ち位置は異なる中、どういった営業組織を目指しているのでしょうか。各社の現在地も踏まえて、目指している営業組織についても語られました。
中島さんは営業DXサービスの導入企業が1万社という現状を踏まえ、「まだまだやらなければいけないことが多く、スタートアップの気持ち」だと言います。
「日本に数百万社あることから逆算すると、まだ1万社しか導入いただけていない。組織の規模は一定大きくなりましたが、まだまだスタートアップの気持ちですし、チャレンジャーとして今後もグローバルも含めて、どんどん挑戦していかなければいけないと思っています。グローバルも含めて誰もがSansanを知っている状態を目指したいです」(中島)
黒川さんは「SmartHRの営業組織は営業力がある」というイメージを高め、SmartHRの営業パーソンの市場価値が高まるような組織にしていきたい、と目標を語ります。
「SmartHRはまだまだ『営業力が強い会社』というイメージがないと思います。SmartHRの営業組織もそういった印象を持っていただけるよう、営業パーソンとしての市場価値が高まるような営業組織にしていきたいです。SmartHRで働いていた人たちが、他の会社に行っても大活躍するぐらいの経験が積める営業組織にしたいと思います」(黒川)
上堀さんは「営業として求める基準値」をきちんと言語化し、組織としての営業力を高めていくことに取り組んでいる、と言います。
「LayerXが大事にする行動指針のひとつに『凡事徹底』があります。営業としての凡事とは何か。ここが抽象的なところもあるので、きちんと言語化し、『初回商談はここまでヒアリングしよう』といったように求める基準値を明確にしています。そうすることで、一歩ずつ営業としての基礎レベルを高めていきながら、会社としてはAIの活用にも注力していき、テクノロジーを活用してより良い提案ができるようにしています。組織としての営業力もそうですし、個人の営業力も高めながら、強い営業組織を目指しています」(上堀)
最後は「目指したい営業2.0」と題して、3人が今後目指していきたい営業のあり方について語り、後半のセッションは幕を閉じました。
「営業の生産性を向上させるツールを活用しながら、営業の概念を変えていったり、役割を拡張していったりするのが『営業2.0』なのかなと思っています。今は職種の役割を明確に決める時代でもないと思うので、営業の役割を決めることなく、どんどん新しいことにチャレンジしていくことができたらいいなと思っています」(中島)
「テクノロジーの活用が進んでも、営業としての本質の部分は変わらないと思っています。お客様の課題を解決するための提案をするスキルは不変の価値があるはずです。一方で、テクノロジーを活用して営業の生産性を向上させることの重要性はひしひしと感じているので、今後はそういったことにも好奇心を持って取り組めるかが大事だと思います」(黒川)
「今後はAIの活用がどんどん進んでいくと思いますし、営業としてテクノロジーを使いこなして生産性を向上させられるかは、より重要になっていくはずです。営業としてベースは高めつつ、きちんとテクノロジーを使いこなせる営業組織にしていきたいです」(上堀)