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【イベントレポート】SmartHRとLayerXの2社が語った、2024年のエンタープライズ事業の戦略と振り返り

12月5日、LayerXオフィスにて「2024年エンタープライズ戦略を振り返る:SmartHR×LayerXの実践から学ぶ」と題したイベントを開催しました。

SmartHR エンタープライズ事業本部 事業本部長の佐々木昂太氏とLayerX 部門執行役員(バクラク事業エンタープライズ担当)の花村直親が語った、2024年のエンタープライズ事業の戦略と振り返りとは。イベントの内容をまとめました。セッションのモデレーターはRightTouch代表取締役の野村修平氏が務めました。

RightTouch代表取締役の野村修平氏

横の連携を強めるため、SmartHRはチーム制から事業部制へ

セッションの冒頭、テーマにあがったのは「エンタープライズ部門が立ち上がった経緯」について。SmartHRのエンタープライズ事業本部が立ち上がったのは、2024年1月のこと。それまではFS、IS、CSなど各職種ごとにエンタープライズチームがあった、と言います。

「エンタープライズ企業への導入が決まり始めた2020年ごろから、各職種でエンタープライズチームを組成し、対応をしていくようにしたんです。その後、全社で『エンタープライズ企業をサクセスする』というミッションを掲げ、プロダクト開発などを強化していくことになりました。当時、自分はプリセールスとPMMを兼務していました」(佐々木氏)

エンタープライズ企業の顧客が増え、それぞれのエンタープライズチームの規模が拡大していく中で、自然と事業本部を立ち上げる必要性を感じたそうです。

「職種ごとに組織があると、意思決定のスピード感やマネジメントでも難しい部分があって。それぞれの組織に異なる価値観があるんですよね。そうした中で、より横の連携をしやすくし、意思決定のスピードを上げるために事業本部を立ち上げました」(佐々木氏)

SmartHRエンタープライズ事業本部 事業本部長の佐々木昂太氏

横の連携について、佐々木氏は「FSがアカウントプランを作成してISと一緒にアウトバウンドする」「ISとCSが連携してExpansion(アップセル/クロスセル)を目的とした提案をする」といった動きを考えていたとのこと。2024年1月にエンタープライズ事業本部を立ち上げたことで、社内にはどのような変化が起きたのでしょうか。佐々木氏は次のように語ります。

「毎週月曜日の朝にエンタープライズ事業本部のマネジメントミーティングをやるようになり、良いリズム感が生まれました。また事業本部が追っているKPIの進捗などを共有することで、それぞれの職種に関する解像度も高まっていると感じています」(佐々木氏)

「戦い方が違う」、LayerXがエンタープライズ部を立ち上げた理由

一方、LayerXのエンタープライズ部が立ち上がった経緯は何だったのでしょうか。2023年7月にエンタープライズ部が立ち上がった経緯について、花村はこう説明します。

「もともと、バクラクはSMB(中小・中堅企業)を中心に導入していただいていました。そうした中、従業員数が1000人を超える企業様との商談の機会がいくつか生まれていたんです。そのうちの1社の導入確度が高そうだったのですが、必要とする機能要件などを見ると普通にやっていては受注できないだろう、と感じました」

当時、花村はプロダクトマネージャーという役職でしたが、FSと連携してプリセールスとして、受注に向けて動いていたそうです。

「THE MODELではISが商談を獲得し、FSが受注して、CSが運用するといったように、それぞれがプロとして戦う感じになります。ただ、エンタープライズ企業の案件に関しては、受注前からCSも巻き込んでFS、プリセールス、CSの3人セットで動くことを意識していました。その結果、初めてエンタープライズ企業の案件を受注できました」(花村)

LayerX 部門執行役員(バクラク事業エンタープライズ担当)の花村直親

その後、社内で「エンタープライズ企業の需要も開拓できるかもしれない」と盛り上がった一方で、「SMBとは戦い方が違う」ということもわかり、それぞれの職種が連携して動くプロジェクト型のような組織として、エンタープライズ部が立ち上がったとのことです。

エンタープライズ部の立ち上げにあたって、花村は「一番最初に『予算を外す』ということをやった」と言います。

「新たに部門を立ち上げるメリットは、意思決定の基準を変えられるところにあります。SMBを対象としたこれまでの営業では、売上をKPIにしていました。ただ、エンタープライズ企業向けにPMFしていない状況で売上をKPIにして予算を追いかけてしまうと、受注できそうな企業だけに目を向ける戦い方をしてしまいかねません」

「そのため、最初に予算を外し、その代わりに各業界の“カテゴリーキング”と言われる有名企業をリストアップし、その企業からの受注を目指していくことにしました。会社には「P/Lではなく、B/Sを太らせよう」という話をして、理解を得ました。その話をして予算を外すことを認めてくれた会社には感謝しかないですね」(花村)

LayerXとSmartHR、それぞれのエンタープライズ部門の特徴

両社とも2024年にエンタープライズ部門が立ち上がりましたが、それぞれの組織にどのような特徴があるのでしょうか。LayerXの花村は合計6つのプロダクトを展開する「バクラク」シリーズの特性も踏まえて、次のように語ります。

「『バクラク』シリーズはプロダクト数が多く、単価もさまざまです。種類が豊富だからこそ、さまざまな切り口でお客様と接点を持つことができます。ERP(基幹システム)の場合は数年張り付いて、数億円の案件を受注するという戦い方ですが、LayerXはひとつのプロダクトから少しずつ使ってもらうことを意識した組織構成にしています」(花村)

例えば、FSが案件を受注した後、CSにアカウントマネジメントを委譲する体制をとっており、商談機会を生み出した数などをKPIとして設定しているそうです。

「すでにバクラクのプロダクトを使ってくれているのは、一番良いコールリーズンなんですよね。『他のバクラクがカバーしている領域のシステムを見直すタイミングはありますか?』という話が自然とできる。そこから新たに商談の機会が生まれたら、セールスにトスアップするということをやっています」(花村氏)

SmartHRのエンタープライズ事業本部の特徴について、「レベニューオペレーション(RevOps)を担うチームが大きな特徴になっている」と言います。

RevOpsとは、収益成長を実現するために利益を生み出す部門の連携を強化し、統合・管理する機能や組織のこと。SmartHRでは、それぞれの職種でOpsチームがあったそうですが、横断で見るRevOpsチームを新たに立ち上げることで、意思決定の精度などが上がっているそうです。

「今まではそれぞれのチームでデータを見るだけだったのですが、RevOpsチームによって横串で全体のデータを見れるので、議論が活発に行われるようになりました。『この案件ではこういう動き方をしていこう』『商談基準を変えていこう』などの意見が生まれ、データの振り返りをもとに行動の改善にもつながっています。RevOpsチームがあることで、意思決定のスピードと精度が圧倒的に上がっているのを感じています」(佐々木氏)

エンタープライズ企業の受注に向けて、どう開発組織と連携するか

セッションの最後は、エンタープライズ企業からの受注を目指していくにあたって、どのように開発組織と連携しているか、について語られました。花村はもともと開発エンジニアを務めていたこともあり、「開発組織との連携は重要」と言います。

「昨年、とあるグローバルSaaS企業でCMOを務める方の話を聞く機会があり、その方が『どれだけ営業やマーケティングを頑張っても、フィットしない製品は売れない。マーケティング担当者がすべきことは、製品の改善を開発組織にフィードバックすること』と言っていて。CMOがそれを言うって本当にすごいことだなと思ったんです。その言葉をもとに、この1年くらいは開発組織との連携をすごく重視して動いてきました」(花村)

具体的には、システム選定において「絶対に外せない要件」、いわゆるノックアウト・ファクター(KOF)は何か、案件を受注するために必要なことを洗い出し、それを伝えていきます。

「いち企業の開発要望として伝えるのではなく、重点アカウントのKOFの解消がどれくらいの売上をつくるのか。プロダクトマネージャーのマネジメント職を集めた毎週のミーティングで共有し、最終的な意思決定はプロダクトマネージャーにありますが、必要であれば優先順位を上げるという意思決定になります」(花村)

基本的には「汎用的になる機能」であることを前提とした上で開発を進めてもらっているそうですが、SAM(自社のターゲットになり得る層の需要の総数)の広がりが見込めるような機能に関しては、「優先度が上がりやすくなる​​」(花村)と言います。

「それとは別で、「このお客様に導入いただけたらモメンタムが変わる」と感じる案件に関しては、経営マターとして前提条件は無視して進めていく、ということもあります」(花村)

SmartHRでは、プリセールスの方が開発組織へのフィードバックやPMMとのミーティングで主体的な役割を担っている、と言います。

「プリセールスはコンサルティング業界出身の人も多く、要件定義や費用対効果の策定が得意なこともあり、いろんな案件に関わっているんです。エンタープライズ企業の案件もそうですし、Expansionや新規開拓なども横串で担当しています。そうした背景から、プリセールスがPMMと会話する、開発にフィードバックする機会が増えています」(佐々木氏)

パネルディスカッションが終わった後は、オフラインの会場でしか聞けない質疑応答の時間もあり、参加者からたくさんの質問が投げかけられ、大盛況のうちにイベントは幕を閉じました。今後もLayerXでは、さまざまなイベントを開催していく予定ですので、最新情報が知りたい方は下記のページをチェックいただければと思います。

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