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失敗すらも「大発見」になる。AI・LLMで社会を切り開く中村龍矢のテクノロジーとの向き合い方(#LXエモカレ)

LayerXで働く人たちの心のうちに迫る「LayerXエモカレ」。今回は、部門執行役員(AI・LLM事業)の中村龍矢が登場。

創業からLayerXに参画し、R&D部門リード、プライバシーテック事業責任者を経て、現在はAI・LLM事業部の責任者として新規プロダクトの立ち上げを担う中村。最年少の執行役員として、さまざまな経験を積んできた中村に「怖さやプレッシャーはなかったか?」と問うと——

「ひとりのときに、チームメンバーの笑っている顔をよく思い出す」と話す中村の素顔が覗くインタビュー、ぜひご覧ください。

中村 龍矢
部門執行役員(AI・LLM事業)

1997年生まれ。株式会社Gunosyにて機械学習及び自然言語処理関連の開発に従事したのち、LayerXに創業より参画。R&D部門をリードし、研究成果を国内外の学会・カンファレンスにて発表し、大学・行政との共同研究を経て、PrivacyTech事業を立ち上げる。過去にはパブリックブロックチェーン分野でも活動。Ethereum プロトコルの脆弱性を複数発見し、仕様策定に貢献しており、日本拠点のチームとしては初めてEthereum Foundationのグラントを獲得した。2020年度IPA未踏スーパークリエータ認定。2020年 電子情報通信学会 IA研究賞 最優秀賞 (共著)。「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023」受賞。

知的単純作業からの解放。Ai Workforceが目指すもの

——中村さんは2023年4月に設立されたLLM Labsのころから、新規プロダクト開発に携わって来られました。今回リリースされたAi Workforceとはどのようなプロダクトなのでしょうか。

※ 3M. (2024). 3M 2023 Annual Report. U.S. Securities and Exchange Commission. https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/66740/000130817924000309/mmm4298631-ars.pdf

一言で言えば、我々の中では「知的単純作業」と呼んでいる作業を、LLMを活用することで自動化を可能にするものです。例えば、金融機関で融資の稟議を進める際の決算書を稟議書に転記するような作業をイメージしてもらえると分かりやすいかもしれません。

決算書を読んだり、稟議書をレビューしたりするには、専門知識も必要ですし、集中力や分析力を要します。それをAI・LLMの力で完全に自動化することはまだ難しいのですが、「決算書から稟議書に転記をする」というような正解の決まった作業についてはAI・LLMと相性が良いと考えています。「知的単純作業」を自動化することで、人間はより専門性が高く、クリエイティブな作業に時間を使うことができるようになるはずです。それが、我々が目指している世界です。

——いつ頃から構想されていたのでしょうか?

明確に「こういうプロダクトを作ろう!」と始まったわけではありません。2023年にAI・LLM事業部が設立され、まずはLLMが社会にどう役立つのか、どういう業務に活用できるのかということを実験するところから始めました。

仮説検証をするなかで、次第に「この業務には使えそうだ」というLLMの使い道が見えてきて、実験をするためにユーザーが触れるものを作り、プロダクトに繋がっていったというのが実態です。具体的に製品化に向けた動きが始まったのは、今年に入ったくらいですね。

事業責任者としてステージが前に進んだと感じることは嬉しいですが、一方で非常に変化の激しい業界でもあるので、最初の進み方が間違っていたら取り返しがつかない。今の時間の使い方や意思決定が数年後のチームのあり方を決めてしまうので、プロダクト化が決まった今もドキドキ感はありますね。

「すべてを捨てて事業の成長にコミットする」事業責任者としての心構え

——中村さんは最年少の執行役員としてプライバシーテック事業やAI・LLM事業を牽引されてきています。年齢や経験年数はただの数字だとしても、怖さやプレッシャーはありませんでしたか。

執行役員に就任する少し前(2019年)に登壇した国際カンファレンスにて

結論から言うと、怖さなどはほぼありませんでした。つまらない話かもしれませんが、R&D組織から段階的に事業部に変遷してきたので、自分自身もゆっくりと慣れながらできることを広げていくことができたのだと思います。超急成長する事業だったら違ったのかもしれません。ただ、怖さはなくても自分の経験不足を感じることは当然あります。

——例えば、どういうときでしょうか?

経験も実力もあるメンバーを迎えるときですね。LayerXは前職での華々しい経験や実績があっても、良い意味で「それはそれ、これはこれ」と考える文化があります。ただ、AI・LLM事業部には次々と、急拡大したスタートアップの組織を率いたCTOや、有名IT企業の役員経験者など、自分など手も足も出ないようなメンバーが加わってくれています。

はるかに自分よりも長く仕事をしてきて、私が扱ったことのないようなサイズの事業を牽引してきた人たちが、たくさんの選択肢の中から自分のチームを選んでくれることはもちろん嬉しいです。その一方でその人たちが持っているものを持っていない私に、人生をどう預けてもらおうかと考えることはあります。

事業責任者って本質的には「役割」でしかないので、「そのチームで一番偉い」とは思っていません。「自分が偉い立場」だと思ったら、きっと途端に怖くなったり遠慮したりしてしまうと思います。

極端な表現ですが、事業責任者は「すべてを捨てて事業の成長にコミットする」役割なので、それをやるのに一番適しているのが、今は私なのかなと。今の自分は、仕事を心からの“趣味”にできていて、チームを背負っていく明確な覚悟があるので。事業にフルコミットし続ける役割が事業責任者だと考えると、今が一番良いタイミングだと思っています。

人生で大切にしているのは「給料がゼロでもやりたいことがある」状態を維持すること

——以前、あるインタビューでの「生命維持活動に関わる時間以外は研究をする」という言葉がとても印象的でした。事業責任者としてのミッションに深くコミットすることでの葛藤などはないのでしょうか?

採用候補者の方からも良く聞かれます(笑)。ただ、その発言を突き詰めると「本業を一番にやる」ということ。研究でもビジネスでも、それ以外のことでも、自分のやりたいことを本業にし、それに全力で取り組みたいという意味なんです。それが今は、AI・LLM事業部を大きくすることなので、自分自身の感覚としては変わっていません。

元々、まだ答えが出ていないものの答えを探すことが好きなんです。AI・LLMは盛り上がってきているものの、5年後、10年後にどうなっているかまったくわかりません。「わからないもの」を通して、社会がどうなるのかを解き明かす、「白黒をつける」という意味での研究が好きなので、AI・LLM事業部でやっていることはまさにそれだと思います。

事業の立ち上げフェーズって、「この技術を使ってこの社会課題を解決できるかも」といった仮説や、未来予想に基づいてそれが本当かどうかを解明していく活動なので、ある意味「失敗や仮説の見立てが外れていた」ことを導き出すのも大発見だと思うんです。

「給料がゼロでもやりたいことがある」状態を維持することを人生において大切にしているので、本当に今が楽しいですね。

——そのモチベーションはどこからくるのでしょう?

普通に聞こえると思いますが、誰かに喜んでもらいたいからです。そもそも、人間のDNAには誰かに「Wow!」となってもらうとか、面白いと喜んでもらうことが幸せに感じるようにプログラムされていると思っています。

だから、というわけではないですがやっぱり誰かに喜んでもらう研究・仕事がしたいので、ユーザーが見えるかどうかは大きいですね。ある一部の特権階級の人たちだけが得をするのではなく、本当に社会の役に立つ、誰かのためになるテクノロジーを研究し続けたいなと思います。

AI・LLM事業部は、一貫性のあるまっすぐなチーム

——中村さんから見た、今のAI・LLM事業部を一言で表すなら?

正義感があって、根が真面目なメンバーが多いチームですね。チーム間でのやり取りであっても、お客様に対しても、「真っ直ぐな選択」がデフォルト値になっている気がします。一貫性を持って生きているメンバーが多いですね。

LayerXの行動指針に「徳」という言葉があります。「徳」は抽象的な概念なので、徳があるかどうかを判断することは難しいですが、私自身は「人間として一貫しているかどうか」だと思うんです。一貫していない自分を取り繕おうとするときに、徳は壊れる。初めから人に対しても社会に対しても真っ直ぐ向き合っていれば、矛盾が生じることはありません。あくまでこれは理論上の話ですが。

人って本質的なところはなかなか変わらないと思っているので、一貫性があるかどうかはこれからも大切にしたい指針です。

——他にもチームで大切にしていることはありますか?

みんな一緒にランチに行くことがデフォルトになっていますね。個人的に健康や仕事の楽しさを左右する大きな要因は、睡眠時間が短くなることと、ご飯が雑になることだと考えているので、どういう形であれランチは基本的に1時間ゆったりとした気持ちで摂ってほしいんです。

もちろん、ひとりで食べたい人を無理に誘うことはしませんが、仕事における楽しさのひとつは、仲間と一緒にワイワイする瞬間だと思うので、みんなで同じ食卓を囲む時間も大切にしています。

ちょうどオフィスが移転したばかりなので、メンバーみんなで新たなランチのお店を開拓するのも楽しみです(笑)

事業的には日々難しい局面に多く向き合わなければなりませんが、「箸が転がっても面白い」空気のなかで楽しんでいるメンバーがすごく好きで。よくひとりのときに、チームメンバーが笑っている様子をよく思い出すんですよ。バグが起きても、商談が上手くいかなくても、苦しい状況を丸ごと楽しんでいるメンバーを見ていると、本当にかけがえのない時間を共にしていると感じます。

私はミュージカルや音楽が趣味なんですが、『人間になりたがった猫』という有名な作品があって。その中に《気分ひとつで》という歌があります。「気分ひとつで この世は いつもバラ色さ」、要するに気分次第で何事も楽しいと捉えられるし、楽しくないとも捉えられる。それは事業にも言えることだと思うんです。

LINE社での取材時にて

歴史の傍観者ではなく、歴史そのものを作れるのがAI・LLM事業部の面白さ

——これからの展望をお聞かせください。

LLMが今後どういう社会に役立つか、白黒をつけられるのがAI・LLM事業部の面白さだと思います。自らの手で探求し、解明し、答えを出せるのは今しかできないことです。20〜30年前に「インターネットで世界はどう変わりますか?」という問いが出てきたことと同じくらい、おそらくこの1年の間でも状況は目まぐるしく変わっていくと思います。歴史の傍観者ではなく、歴史そのものを作っていく当事者になりたいと思う人に仲間に加わってほしいですね。

技術進化は定期的に起こるもので、自分たちの既存事業が吹っ飛ぶものが出てくる可能性もあります。テクノロジーの進化に対しての備えや、大きな転換点が来たときにチームで戦う力を養えるかが、この先日本を代表する企業に成長するためには必要なことだと思っています。ブロックチェーン、プライバシーテックと我々は少しずつ経験を積んできているので、AI・LLM事業部でも失敗・成功含めて多くの知見やノウハウをLayerXに残していきたいですね。

あとは、新しいテクノロジーを使って社会的に大きな問題を解くことを経験しているプロダクトマネージャーやソフトウェアエンジニア、BizDev(事業開発)人材が本当に少ないので、我々が事業を大きくすることによって、技術による社会変革を支えられる人が増え、社会に貢献できると良いなと思います。

LayerXの半期を締めくくる総会で行ったボイスパーカッションによるオープニングアクト

——中村さんご自身の展望は?

まずは、AI・LLM事業部を成長させること。その先の中長期の話でいえば、私の世代含めて、これからどんどん寿命が長くなるはずで、そう考えたときに個人的には自分の本業のカテゴリを変えても良いなという思いがあります。これまではソフトウェアや数学に関係する仕事がメインでしたが、それとは全然違うものとか。

例えば、趣味にしている音楽やエンターテインメントの仕事もやってみたいですね。高校の文化祭でミュージカルをやったことがきっかけで、今も歌を趣味で続けています。先日行われたLayerXの総会でも、オープニングアクトとしてボイスパーカッションを披露しました。そのときもみんなが「Wow!」となってくれたのが、本当に嬉しかったですね。

投資家やパトロン的な立ち位置ではなく、自分で何かを生み出すには実力がないといけないので、この先0.1パーセントくらい本業以外のことに時間を使うとするなら、音楽やエンターテインメントのプレーヤーになるチャンスを残しておくために技術を磨いておきたいと思っています。

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