MAツール選択の決め手は「愛」。LayerXが取り組んだMA移管プロジェクトの全貌(#LayerXメンバーブログ)
この記事は、LayerXメンバーの書いたブログなどを紹介する #LayerXメンバーブログ としての投稿です。
今回は、バクラク事業部マーケティングマネージャーの松岡遥歌の記事を紹介します。
はじめに
こんにちは、LayerXの松岡遥歌です。法人支出管理サービスの「バクラク」シリーズを提供しているバクラク事業部でマーケティングマネージャーを務めております。会社ではmappu-(まっぷー)と呼ばれています。
自己紹介については、以下のペライチをご覧ください。
この記事では、私がLayerXに入社して約1年のなかで最も注力したプロジェクトの1つ、バクラク事業部のマーケティングオートメーションツール(以後MA)の移管と経緯について、お伝えできればと思います。
この記事が、MAツールの新規選定や移管を検討されている方の一助になれば幸いです。あわよくば、バクラクのマーケティングOpsにご興味持っていただけると非常に嬉しい。
ちなみにLayerXのMA周りについては、約2年前に事業部長の牧迫がバクラク事業立ち上げ時のツール選定と設計を語っています。
「あれから2年、バクラクのMAはどうなったのか?」という続きの話でもありますので、もし興味&お時間がある方はそちらもぜひ御覧ください。
Notion AIさんによる要約はこちら。
拡大するプロダクト展開、カオス化するMA/SFA
最初にバクラク事業について軽く説明させてください。
2023年12月現在、以下5プロダクトを展開する法人支出管理サービスです。
大変ありがたいことに、2021年1月のリリース以来シリーズ累計の導入社数8,000社を突破するなど、多くのご支持をいただいています。
プロダクトが増えること、お客様からのご期待が増えること、双方どちらも非常に喜ばしいのですが、事業の拡大とは裏腹にある悩みも大きくなっていました。正しいデータはどれ?問題です。
詳細は牧迫のnoteをご覧いただければと思いますが、セールス&マーケティング活動の基盤であるMA/SFAは、プロダクトリリース前から活用を始め、拡大期までのそれぞれのフェーズで、あえてスモールに検証と最適化を繰り返すことで、Revenue全体のKPIごとにツールを使い分ける運用になっていました。
上記引用の通り、柔軟にツールを活用する意思決定は立ち上げ時において非常に重要です。リリース当初からがっつりMA/SFAを組むことは、スタートアップにおいて超重要なスピードを犠牲にしてしまいます。
ただ事業拡大のスピードがあまりにも早く、フェーズによって柔軟に変える前提の基盤は、個別最適化が進んでいきました。
結果としてマーケティングとインサイドセールスはHubSpotを活用し商談を獲得、フィールドセールスはSalesforceで既存顧客や案件管理を行うことで、本来一貫してみるべきRevenue全体のKPIが分断され、データの整合性にズレが生じていました。
もちろん、HubSpotとSalesforceには強力な連携機能があり、それを存分に活用しRevenue管理をされている企業も多く存在するため、あくまで弊社の例でしかありませんし、商談作成や情報修正のルールを明確に決めきることが出来ていれば、違う未来もあったと思います。
しかし、新規プロダクトのリリースも見据える2023年3月、このままではお客様に対して適切なコミュニケーションを取ることが出来ないと判断し、MA移管を決定しました。
MA結局どれがいいの問題
MA移管を決定しました、と書きましたが、移管決定前に以下4つの選択肢を検討しています。
自己紹介ペライチにも記載しましたが、これまで複数のMAを触ってきた中で明確に言えるのは、MA自体に関する機能そのものに、製品ごとの大きな違いはない、ということです。ただし、根底の思想に特徴があり、機能アップデートの優先度や活用方法に差分が出ます。
MAは実現したい理想に最も近いものを選ぶべきで、自社にとってどれがいいのか、を考えきれているかがポイントです。機能に差分がないからこそ、このMAを活用する目的はなにか、ユーザーとどういうコミュニケーションを取りたいのか、を意思決定者が描けているかによって、選ぶMAは変わってくると思います。
どれだけユーザーにプロダクトを届けたいという愛があったとしても、その想いを乗せる方舟の愛の方向性と一致しなければ、その想いは適切に届くことはありません。自らが届けたい愛の共感度が高いMAを選ぶべきです。
この点については、WACULさんより決定版とも言えるレポートが出ていますのでこちらをご覧ください。レポート内の比較表や思想で選ぶおすすめMA診断などは、これからMA選択にお悩みの方は必見です。
で、バクラクはどうしたのか?ですが、我々が選択したのはMAをSalesforce Account Engagement(旧:Pardot)に移管することでした。
先述した通り、今回の目的は「データの整合性をはかり、Revenue全体で振り返りができるようにすること」です。そのためには商談管理から成約までを担うSalesforceと緊密に連携することが求められます。まさにこれはAccount Engagementの思想と一致することから、この選択となりました。
初公開、LayerXのMA移管全タスク
移管が決まってから、移管を完了させるまでの猶予は約3ヶ月しかありませんでした。この90日の間にデータの移管やフォームやファイルの差し替えはもちろんですが、弊社基幹ツールとの連携、これまでHubSpot上で業務を行っていたインサイドセールスの運用も全て新しいフローに置き換える必要があります。
一般的には利用ツールや業務フローが変わると、一時的でも生産性は落ちるものです。インサイドセールスの生産性が落ちる=商談獲得数が下がることです。いかにこれを最小限に抑えるかも非常に頭の悩ませどころでした。
まず行ったのは、移管プロジェクトチームの発足です。
巻き込む部署や影響が大きいだけに、各メンバーの責任範囲を明確にすることが何より重要です。
次に、移管プロジェクトのスコープをインサイドセールスとマーケティングの2つに分け、それぞれのWBSを作成しました。
このとき業務影響を最小限に抑えるため、業務フローに慣れる期間とQA期間を長く取ることを目的にISの業務移管を先に行いました。
QA期間においては、実際のISメンバーからnotionに疑問や改善要望を上げてもらい、Salesforce Adminと共に急ピッチで開発を進めていきました。
結果として移管前後で商談獲得数の落ち込みなどはなく、むしろ右肩に伸びるという異例の事態に。弊社のカルチャーを表す羅針盤の「型に投資する」意識が最大限に発揮された結果だったと思います。
以下が作成したWBSの一部です。
実際に作業を始めると、ここにはない非常に細かい作業も多く発生したのですが、改めて見るとこれだけの量をよく3ヶ月無事故で乗り切れたなとしみじみしてしまいます。
想像以上に長くなってしまいましたが、そろそろ終わります。
MA移管はスタート。データ・ドリブン・マーケティングはここからはじまる
あまりにも膨大な移管作業を終え、バクラク事業のKPIは全てSalesforce基盤のもとに統一管理されるようになりました。正しいデータはどれ?問題に終止符が打たれたのです。
一部ですが、現在のSalesforce画面でどのようなデータをモニタリングしているのかをお見せします。これらの項目の整合性がズレることなく、Revenueデータを一気通貫でモニタリングできるのって、控えめに言って最高です。
検討期間を含めると約半年に渡ったMA移管プロジェクト。しかしMA移管はコンパウンド・スタートアップを掲げるLayerXにおいて、データ・ドリブン・マーケティングを始める第一歩でしかありません。
弊社代表の福島も言及していますが、"データとAIによって営業生産性が増幅される組織"の実現には、正しく統合されたデータがあってこそ。
今回ようやくその土台を築くことが出来た一方で、我々が目指す未来の実現にはより一層多くの叡智が必要です。
この誰も到達したことないデータ・ドリブン・マーケティングの極地に挑戦してみたい方、ちょっと気になる方は是非Opendoorでお話しましょう。
また直前も直前ですが明日12/13にはSmartHRさん、Ubieさんとの合同イベントがあります。ちょっと顔だしてみるかぁ位の感覚で、是非お気軽にご参加ください。
これまでご拝読ありがとうございました!
明日はEventHubマーケターのスーさんの「イベント2.0」です!
余談
繰り返しになりますが、今回の移管目的は「データの整合性をはかり、Revenue全体で振り返りができるようにすること」です。
これを実現するためにはMA/SFAのデータ連携が緊密に行われることも大事ですが、ユーザーに記入負荷をかけることなくリード情報をリッチに出来るか、も重要なポイントです。最後に画面アウトプットでお見せした部分ですね。非常にこだわって設計しているのですが、あまりにニッチ×Techナレッジにはなっているので、また別の機会にお話できればと思います。