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LayerX羅針盤のウラ話(#LX役員雑談 文字起こし)

こんにちは、すべての経済活動をデジタル化したい LayerX 石黒です。

LayerXは先日、2022年の下期に際して「羅針盤」というドキュメントを発表しました。これは、全メンバー向けに会社が目指していきたい方向性(事業面だけでなく、働き方やカルチャーなど多岐にわたります)を示したものです。

これが社内で非常に好評だったこともあり、このドキュメントを一般に広く公開することを決定。そして、「羅針盤」公開の裏側とそこに込めた思いを、CEOの福島(@fukkyyCTOの松本(@y_matsuwitter)、人事広報担当役員の石黒(takaya_i)取締役の手嶋(@tessy11)の4人で、Twitter Spaceにて“雑談”しました。
このnoteでは、その雑談の内容を、“ほぼ”全文文字起こしでお届けします。



「羅針盤」の起源はLayerXじゃなかったって本当!?

手嶋:まず羅針盤って名前になったのかを振り返ると、それこそ石黒さんも松本さんも入社する前に、LayerXは3ヶ月に1度、経営メンバーで丸一日話す日を設けていて。そこで話したことを翌週に全社員に共有する資料で使ったのが最初だった気がします。

福島:そうですね。起源でいくと、僕らの関連会社にMDM(三井物産デジタル・アセットマネジメント)という会社があって。そこに上野さんという三井物産から出向している方がいて、彼が「羅針盤」って資料を作っているのを見て、めっちゃいいなと。

手嶋:それで「羅針盤」なんだ。

福島羅針盤ってそもそも方向を示すもので、経営の方針を示すメッセージとピッタリ合いますよね。

手嶋:そうしているうちに会社も大きくなっていって、経営ミーティングの内容は場合に応じて伝えるようになっていきましたよね。羅針盤をある種のLayerXのカルチャーブックというか、考え方のドキュメントとして出したことはありましたっけ?

石黒:今回が初ですね。

手嶋:これって元々は、社外に出す前提じゃなかったんですよね。

福島:そうですね。

松本:元々、福島さんと1on1を隔週でやっていて、そこで組織が拡大する中で文化って薄まっていくよねとか、意識付けしていかないとまずいよねみたいな課題感があって。

現社員の半数はここ1年で入社していて。それは文化が薄まるし、今後さらに拡大していくと薄まり続けるのは必然なので、この下半期は文化づくりもっとフルパワーでコミットしていかないといけないと、スタートしたという感じでしたよね。

「出さない理由もないから出しちゃおう」一声で決まった羅針盤公開

手嶋:なるほど。資料も2人で作ったんですか?

松本:8〜9割は福島さんです。

福島:大前提、LayerXは週次定例っていうのをやっていて、代表の僕がそのとき考えていることを話しているんですが、その内容を遡ってまとめただけなんですよ。

手嶋:でも、新しい要素もあるよね。

福島:1〜2個ぐらいですね。どうしても定例で話す情報ってフローの情報なので忘れていくじゃないですか。なので、それをまとめた感じですね。

手嶋:フロー情報をストック化して、いつでも見られるようにしたんですね。

福島:あと意外と過去ふりかえっているとずっと同じこと言っているなぁって。

松本:繰り返すのは大事ですからね。

石黒:そりゃそうだ。

福島:振り返ってみて思ったのは、意外と同じこと言ってるなと。表現は違うんですけど。基本LayerXはインストール文化から成り立っているので。

松本:羅針盤自体も、僕と福島さんで書いたとはいえ、メンバーみんなが見つけていったものを抽出していった結果が、あの羅針盤です。

手嶋:なるほど。それでまずは社内に共有して、そのあとは?社内ドキュメントのまま外に出したんですか?

福島:ちょっとだけ編集しました。と言っても、1〜2行ぐらい。

手嶋:95%ぐらいがそのままですね。

福島:1行3文字ぐらいだけ修正しました(笑)

石黒:98%ぐらいそのままですね(笑)

手嶋:これって考え方が世間に共有されたほうが、いろんな意味でプラスの効果があると思って、石黒さんから「外部に出しません?」って打診したんでしたっけ?

石黒:そうですね。よく見たら出せないものもないし、出さない理由もなかったので、出しちゃいましょう!って(笑)

手嶋:我々、スライドを外に出すとか、noteを出すとか、結構情報をオープンにしてきましたけど、この羅針盤はかなり見られたんですよね。

石黒:スマッシュヒットの部類に入りますね。(2022年10月11日時点で)41,000viewに達しました。

手嶋:福島さん、松本さんは、これだけ見られたとことを、どう考えていますか?

松本:最近、とある会社から「LayerXの文化を参考にしたい」と相談をもらって。具体的に言うと、行動指針の「徳」を使わせてほしいと。僕らとしては、好きにやってくれて構わないんですが、これに象徴されるように、やっぱりどの企業にも共通する「いい文化」みたいなものはあると思うんですよね。いろんなスタートアップで生かせそうなエッセンスというか。

とは言え、綺麗にまとまったものはあまりないので、今回羅針盤と言う形で公開されたものが、各社の中でエッセンスとして取り込む材料になったのはよかったなと思っています。

文化ってみんながいいところをミックスしながら作っていくものなので、こうやって共有することで、それぞれが自分の文化に掛け合わせて、化学反応を起こしていってほしいですね。

事業はあくまで「すべての経済活動を、デジタル化する」ための手段

手嶋:じゃあ、具体的に羅針盤の中身を見ていきたいんですが、まずは5ページかな。

実はこのミッションは、2020年の冬から春にかけて作っていて。当時はまだブロックチェーンの事業をやっていました。そこから事業内容が圧倒的に変わっているんですけど、その時に作ったミッションでまったく違和感がないことを思うと、注目していることとか見ている世界は、本質的には変わっていないのかなと感じますね。

福島:次のページと次のページですかね、僕と松本さんの話があるんですけど。

手嶋:モチベーションのページですね。


福島:日本の社会課題×ソフトウェアを考えたときに、僕はやっぱり労働や金融の領域における生産性の低さみたいをソフトウェアでどう変えていくか、それもプロダクトの力を使って変えていくかの部分が、そのまま「すべての経済活動を、デジタル化する。」って言霊につながっているので。

あくまで事業内容はそこに近づくための手段として捉えているので、やっぱりそこは一貫して、僕は最近「お金とソフトウェアの交差点」みたいな言い方をするんですけど、ソフトウェアの力でどんどん早く便利な世界になっていくのを見るのが、1番面白いなと思っていますね。

ブロックチェーンの何が面白いって、お金がソフトウェアに乗ることだと今でも思っていて。僕らは、アプローチは変えたんですけど、やりたい事は同じなんです。

手嶋:だからブロックチェーンの事業から今の事業体に移行するときも、自然の流れの中でできたところがありましたよね。

LayerXの本質的な強み。それは……

手嶋:ミッションの次だと行動指針となるわけですが、行動指針については結構いろんなところでお話をしているので、今日はあえて違う話をしたいなと思います。14ページに「LayerXの本質的な強みは何か」というページがあって。これは松本さん、どういうことですか?

松本:ソフトウェア企業にとって当たり前の文化、例えばMDM(三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社)の事業なんか、めっちゃ重い金融業じゃないですか。そこで、「アジャイルな改善」なんて言うと、めちゃくちゃ違和感を感じる人たちも多いと思うんです。けれど、そこに「ソフトウェア企業っぽさ」を入れていくことで、前に進むものがいっぱいあるよねっていうのがMDMでも実際に見えていて。

「SaaS企業ってそもそもソフトウェア文化じゃない?」って思うかもしれないですけど、とは言えtoCの世界からやってきた人間からすると、まだまだそうなりきれていないところもあって。例えばユーザ体験なんかはそのひとつですね。

そういうものを、一つひとつ改善していくだけで、すごく良くなる手ごたえもあって。これが我々の強みなんだろうなと思っていますね。

手嶋:4ページで「LayerXは性質の異なる複数の事業を抱えるコングロマリットカンパニーです」って宣言をしていて。

法人支出管理の事業もやっていくけど、冒頭から言っている通り、合弁会社(MDM)も作って、デジタルネイティブ時代のアセットマネジメントを展開している。長期的には、MDMのような大企業ならではのアセットを使った共同事業をもっとやっていこうとしていますよね。

具体的にMDMでは、どういった「ソフトウェア企業にとって当たり前の領域」を適用しているんですか?

松本:僕らとの一番の差分が何かと言うと、内部でものを作るところだと思うんですよね。「内部でものを作るなんて当たり前じゃん」というのはスタートアップに限った価値観で、全然当たり前ではない。多くの場合、アイデアを外部に委託して形にしてもらうんですけど、MDMはエンジニアが全メンバーの1/3から半数位の規模で在籍していて。彼らが一つひとつプロセスを分析して、勉強しながら改善しているんです。

それをソフトウェアに置き換えて、より効率化するようなことをやっています。それだけで作業時間が1/10になる。そういった新しい技術やツールを使いながら事業を進めている点において、これまでの金融会社のとは少し違うのかなと思います。

手嶋:それは内製化すればいいとか、常注してもらえばいいみたいな話とはどう違うんですか?  

松本:歴史を振り返ってみると、1990年代はSIerに委託して大きなプロダクトを作ってもらう時代でした。そこから2000年代になると、内部に開発者がいるようになった。そのころはまだ事業部が考えて開発チームが作る流れがほとんどだったと思います。

今は、プロダクトマネージャーとエンジニアが一体のチームで日々一緒にアイデアを出しながら改善していくプロセスに切り替わっています。より自然に、エンジニアが事業に溶け込むようになってきています。これがつまり、「ソフトウェア企業らしさ」だと思っています。

ソフトウェア企業×大企業が生み出すシナジー効果

手嶋:なるほど。その次のページ、15ページですけど、「ソフトウェア企業にとって当たり前の文化とは何か」と4つ挙げてあって。これは結構前に作ったスライドだと思うんですけど、いつごろでしたっけ?

福島:相当前ですよね、下手したら2年前とか。

手嶋:SaaSに参入するとき?

石黒:多分、探索期じゃないですかね。

福島:だけど、実はその前からあった話で、それが一番進捗したのがMDMの事業。「なんでユニットエコノミックスで事業を評価しないんですか」と言ったときにポカンとされたんですよ。

この事業はライフタイムバリュー(LTV)だと考えていて、PL上では赤字かもしれないけど、投資すればするほど利益が出る状態。だから短期的な損失は受け入れて投資すればいいじゃないですか、みたいな話を(当時)生意気にも三井物産の役員の方にしたことあるんですよね。

その時もやっぱりポカンとされたんですけど、ちゃんと原理を説明すると「確かにそうだね。うちの事業部でも同じ考えのところがある」と。要は設備投資のような期間損益は損失として計上できるからPL上も黒字になるように、考え方の根幹は同じで。

なので、僕らが当たり前に感じていることを、ちゃんと合理的に実装していくことが強みにつながる実感をすごく持っているんです。でも、それを自覚的にやっているソフトウェア企業はあまりないと、当時思っていて。

今だと「当たり前じゃん」みたいな話ですけど、2年前には自覚していたということことですかね。

すべての業務にエンジニアを配置するのも、開発を内製化して、業務を理解して常に改善していくみたいな。「こういうところが自動化できないかな」とか、「ここをちゃんと作り込むことでコンプラを守れるよね」とか。

僕らからすると当たり前なんだけど、ソフトウェア企業とかソフトウェアビジネスやったことない人からすると「なんじゃその概念は面白い!それでやったほうが合理的だ」と思える話って結構いっぱいあるんですよね。もちろん逆の話も。

どうやって大組織をマネジメントするのかなどは、僕らも金融ビジネスを運営しているのでリスク管理の観点でもすごく大事なんですが、これは商社の方から学ぶところが大きいですね。

逆に僕らの良さは、データを見ながら素早く改善し、それをソフトウェアとして早く実装して効果を出す。それに対しての事業計画も、1年間の計画をガチっとかためるのではなく、毎月変えています。新しい実績に対して投資判断をして、3ヶ月でどれくらい採用すると、どれくらいのROIが出るんだみたいな動き方は、ソフトウェア企業の強みだと思うんですよね。意外と一般的ではない。

手嶋:要するに15ページは、LayerX含めたソフトウェア企業にとっての当たり前を整理して、それが当たり前じゃない領域の人に対して共感してもらうために作ったスライドということですか?

福島:そうですね。

ソフトウェア企業文化で日本のマーケットに資する

手嶋:言ってしまえば、自分たちだけでやれる事業を気持ちよくやっていけばいいじゃないって考え方もあるじゃないですか。なんでLayerXはそこを超えて、自分たちにとっての当たり前が当たり前じゃない領域に交わっていこうとしているんですか?

松本:これこそ、僕がLayerXに戻ってきた理由そのもので。もともとLayerXには「日本をどうにかしたい」「グローバルな事業を作ろう」といった考えがあります。実は日本ってめっちゃお金あるんですよ。個人資産で2000兆円、企業間の送金だけでも年間1200兆円位あって、こんなに大きなマーケットがあるのにすごく効率が悪いと思っていて。

そういう現実を眺めていると、大きな組織が変わって、働き方が変わらないと、この国はこのまま沈んでいくよなと。加えて人口も減っていくばかりですし。

そこで、ソフトウェアができることっていっぱいあるなと思ったんです。さっきの福島さんのLTVの話じゃないですけど、ソフトウェア企業経営をインストールするだけで、全然違う景色が見えてくるはずだという確信があったので、それを実現するためにLayerXに戻ってきました。

日本の生産性に多少なりとも爪痕を残すことを目指さないと、起業家として面白くないし、それが今の我々が事業を展開するtoBの世界のど真ん中だと思うんですよね。

福島さんとは昔、「王道を行く」話をしたような気がするんですけど、「ソフトウェア企業らしさ」をすべての領域に入れていくために、LayerXは今、3つの事業をやっています。

福島:補足で、事業の立ち上げという意味で、「アセットライト」か「アセットウェイト」かは大事だと思っていて。例えばメディアやアプリの立ち上げは、基本的には資金があれば立ち上がります。

一方、例えばMDMで公表しているアセットは1,300億円で、上場REITの平均値くらい。それをスタートアップがいきなり引っ張り込むことはかなり難しいことなんです。だけど、三井物産はもともと上場REITの基盤があって、その上でDXしたいニーズがあった。僕らからすると、自分たちだけでは到底金融ビジネスは立ち上げられないけど、DXに対しての知見はあるので、共同事業なら目指す世界が実現するんじゃないかと思ったんです。

スタートアップが突然1,000億や2,000億の不動産を用意して、販売する投資家のネットワークも探して……なんて一体何十年かかるんだと。重いアセットを持っている企業と組むということは、インターネットビジネスだけではコンタクトできない領域まで踏み込むためでもあります。

松本:さらに補足すると、とは言え大きい事業との合弁だけを推しているのではなく、やっぱりSaaSの素晴らしさもちゃんとあって。プロダクト自体は小さな力でも、仕事の仕方をどんどん変えていくことができる。

決裁者は年間でも数10万円くらいの予算さえ通せれば、最先端の機械学習の力と最高のUXで仕事のやり方を大きく変えることが実現できるんです。特にバクラクは広くいろんな会社を変えていくことができているので、SaaSと合弁と両面取り組むことに意義があるなと思っています。

LayerXメンバーは、息を吸うように〇〇している

手嶋:ありがとうございます。LayerXは性質の異なる複数の事業を抱えるコングロマリットカンパニーですので、長期的には無数の新規事業を立ち上げ続けていくつもりでいます。やっぱり領域にこだわりすぎちゃうと、日本のマーケットの中で成長が止まっちゃうのが見えるので、あえて「コングロマリット」明確に打ち出して、何でもやってやるぞという気概で社内では常に議論していますね。

で、次は20ページですね。これは確かに日常的によく出てくる言葉です。「息を吸うように他社プロダクト・施策を調べる」。これはよくSlackなどにも出てくる言葉ですけど、どれくらい息吸うようにやっているんですか。

福島:難しいですね(笑)。例えばSlackに入るじゃないですか。そうすると誰に言われてもないのに、メンバーが他社のプレスリリースとかを共有してくれるんですよ。

競合プロダクトなんかだと、簡単に触ることもできないですけど、リリースノートを見て「こんな機能出ましたね」みたいな会話が日常に溢れていて。もしかしたら「気持ち悪い」って思う方もいるかもしれないですけど、でもいいものだったら取り入れて、顧客に還元したいじゃないですか。

法律や知的財産に守られているものは別ですけど、基本的にいいものは顧客のために取り入れ、それが共有財産のようにシェアされていくのはいいことだと思うんですよね。それぐらい他社の情報は調べているし、読んでいるし、触れるものは触っています。

石黒:本当に自然です。

福島:これが意外と自然じゃないんですよね、他の会社だと。

手嶋:確かに一部の「あの人たちは詳しいからね」みたいな感じになりがち。

福島:大体どこかに集中するんですよね。LayerXの場合は、みんなやっているっていうのが特異だと思います。

手嶋:そうですね。見るものとか視点は役割によって違うかもしれないですけど、みんなそれぞれの立場でやっていますよね。経営的な目線でやっている人もいるし、競合サービスのディテールがどうなっているかをひたすら見ている人もいるし、マーケの人だと広告こんなのが出てたとか。

松本:フラッと流れてきたバナーとか、タクシーに乗ったときの広告とか、意識しているだけで、そういうものを見たときの視点が変わりますよね。

手嶋:俺も確か夏休みに子どもとタクシーに乗ったら、あるサービスのタクシー広告が流れてきたので、その場で写真に撮ってみんなに共有した事あるなあ。そういうことだよね、息吸うようにって。

松本:常にスマホ構えちゃいますね(笑)

福島:僕はすごくプロダクトを触りますね。海外のサービスも含めて。レビューやLPの情報よりも、実際に触ってみて「自分たちだったらどうするか」とか「こういう視点は欠けてたね」とか学んでいます。

他社さんのプロダクトは検証の塊なわけじゃないですか。自分たちのリソースではできていない検証がなされている可能性が高いので、よりいいものから学ぶという意味で、自分の手で触ってみています。でも、これは最低限のことだと思いますね。プロダクトやサービスを成功させたいなら。

手嶋:執着心があればやるよねという話ですよね。違う言い方をすれば。

福島:とある大社長の話を聞いたときに、若手の人が「こういうサービスを考えています」と相談してくるときに、例えばアメリカのApp Storeのランキング1位〜100位まで触ってみてどういう特徴があるかを見てみなさいってアドバイスをするけど、やり込んでくる人はいないらしいんですよね。

でもそういう人たちは成功しないと。成功する人はそれくらいやっていると言う話を聞いて、確かに前職のときもそうだったと思って。誰に言われずとも、自社のサービスをもっと良くできる方法を考えて、情報を取り込んでいたので、サービスを作る上では最低限の姿勢ですね。やっていなかったら論外、くらいの。

「それ、裏のニーズは何なの?」

手嶋:次に、これも日常業務でよく出てくる単語で、23ページの「裏のニーズ」。「お客さんがこう言っていました」とある営業のメンバーが言ったときに、「それって裏のニーズって何なの?」みたいに使われるものですけど、具体例があったりしますか?

福島:実際にあったわけじゃないですけど、スライドの例が一番わかりやすいかな。うちのプロダクトチームは常に、要望を鵜呑みにしないというか、要望によって起こっている弊害は何なのか、つまり何に苦しんでいるのか、と1段階抽象化した上で、それに対して最高の機能を作ろうっていう姿勢なんですよね。それが実際に言われた機能とは全然違うものになっても、本当の課題を解決することにプライドを持っている。

松本:もっと噛み砕くと、背景課題をちゃんと抽出するってことです。例えば「ここにこの数字を入力したい」という要望があったとき、「そもそもなんで入力したいんだっけ」と要望をひっくり返していくと、「勝手に数字を計算して入力してあげる機能を作るほうがいいんじゃない」みたいな発想とか、「そもそもこの業務プロセス自体をなくしてあげたほうがいいんじゃない」みたいな考え方につなげていく感じですよね。

情報をただ入力するシステム作るんじゃなくて、本当は決算を楽にしたいなら、それに1番パフォームするような最小限のプロダクトってなんだろうと考え続けて作ることが大事。そういうことひっくるめて、「裏のニーズ」なのかなと思います。

福島:要望って基本的にお客様が今使っている環境に依存した情報にもとづいていると思うんです。例えば、Excelと会計ソフトを使っていたら、Excelに入力した情報を自動で会計ソフトに流してほしいという要望が多分出てくるんですよ。

でもそれって、本当のニーズじゃないはずで。そもそも請求書のデータが来たときに、自動で会計ソフトに流れてほしい。それこそが「裏のニーズ」なんです。
なので、今の業務環境やフローを1回バラしてあげる必要があります。「何の環境に依存しているんだっけ」とよく考えて、「これで解決できるよね」「こうやって提案しよう」といった提案レベルで解決できるものもあれば、「これは汎用的だからプロダクトに落とし込もう」みたいな大きなものもあります。

だから、要望の裏を探るのはかなり大変なんですけど、これをサボるとキメラみたいなプロダクトができちゃうので。「結局、何がしたいんだっけみたいな、このプロダクト」みたいな。

手嶋:これをに銘じておかないと、組織が大きくなったときに「結局、何がしたかったんだっけ」ということは起きがちなので、羅針盤に書いておくんですね。

福島:これが読み取れないと「プロじゃない」くらいの意識を持っておくのがいいなと思います。

「なぜ読みがズレたのか」を日常的に突き詰める

手嶋:なるほど、なるほど。27ページに「予算と差分分析」というページがありまして、ファネルで事業の構造を見て、それにもとづいて予算を設定し、ずれたときにはファネルとかコホートとか縦横の目線で構造的にズレの要因を見つけて、新しいストラクチャーのもとでもう一度予算を引く。

ざっくりそういう話が書かれていますが、これは日々やられているんですか?

福島:そうですね。例えば週次で経営会議をやっていて、そこで最も重要な数字は、当月の見込み数字。で、その見込み数字がいつ出ているかというと、2ヶ月前位から出ているんですよね。

もちろん新規で入ってくる商談もあるので、数字は変動していきます。例えば営業でA読みとかB読みとか設定するじゃないですか。大体の会社でA読みだったら60%受注するはずなど、定義すると思うんですが、その定義と、最初に思った読みと、実績がどれくらいズレたのか、かなり細かく見ています。

なので、今はSaaS事業においては、ほぼ外れないですね。カードの部門はまだ理解度が深まっていないこともあって、正直あまり計画が立てられていないんですけど、SaaSはほぼ外れない。エンプラの案件なんかがポンと入って、そこは読みの外だったねって話はあるんですけど、そこも今後は精緻化されると思います。

逆にズレた時って何か緊急事態で、僕らがわかっていないことがある、ないしはわかっていなかったけれどラッキーなだけなので、分析すると次につながるヒントが出てきますね。

なので事業計画って、正しい事業の理解を反映していると、改善のための補助線になると思うんですよね。数学の問題でもよくあるじゃないですか。補助線があると解けるけど、補助線がないとまったくわからないみたいな。

補助線があるから、今の状態がいいのか悪いのかがわかる。ただ数字だけを追っていると今の状態が健全なのか不健全なのかわからないんですよ。補助線を軸に、よかったこと悪かったことを分析していくことが、文化として備わっている感じですね。

月初にその月の売り上げ予測をしていて、それがほぼ合っている状態。それを3ヶ月後、6ヶ月後までやっていると、より事業の理解が深まるんです。そういう状態を作っていくためには、日常的に「どうして読みがズレたのか」っていう会話がされないといけないんです。

手嶋:春ごろに福島さんは、マーケに関しての戦略を踏み込んでやっていましたもんね。当時はそこが課題だったので。

福島:入り口から改善していくのでね。

LayerXメンバーが“戦略”という言葉を使わないワケ

手嶋:28ページ「実行と戦略をわけない」。僕、この資料を見て、「あー」と思ったのが、「戦略」的なページがいくつかあって。ただ、社内で「戦略」という言葉はあまり使わないですよね、実は。

福島:ですね。

手嶋:それ、すごく特徴的だと思っているんですよ。要するに常に実行しながらやることを優先度を変えていっているから、それが一般には戦略と言われるものなんですよね。「今期の戦略はこうです」みたいな言葉はほぼ使わないですよね。

だからあえてこの資料には、「戦略とは何かと聞かれたらこう答える」という内容を書いていると思うんですけど、戦略という概念を羅針盤でまとめておこうと思ったのはなぜですか?

福島:いろんな人がLayerXに入ってくる前提で、「戦略」って言葉の定義を揃えたかったからですね。会社によって使い方が全然違うので。確かに、LayerXのメンバーは、戦略という単語はほぼ使わないですね。「優先度」って言うかな。

手嶋:違う言葉遣いで、事実上戦略のことを話していることのが多い気がします。

福島:手嶋さんの言う通り、戦略じゃなくて優先度って呼ぶところ自体に、特徴がある気がしますね。

手嶋:そうですよね。

福島:じゃあ優先度をどう決めているかというと、結局、現場の情報がないと決められないよねという、当たり前のことが書かれているのが、このスライドです。

戦略っていうと、「海外のサービスがこういう順番でプロダクトして成功しているから……」とか、そういう議論になりがちじゃないですか。

僕らは、どっちかと言うと、どういう順番で今の顧客層を広げていくとか、どういう順番でやると最もMRRにインパクトが出せるか、将来のポテンシャルを上げられるかみたいな、順番の話をしていて、順番を考える人と実行する人を分けるとやばいよねと思っています。

手嶋実行者が戦略を考えているので、戦略って言葉よりも、アクションプランと一体化したようなこととして話されている感じですよね。これはぜひ入社していただきたいですね(笑)。「戦略って言葉を使わないって手嶋が言っているけどどういうことなの!?」って。

松本:戦略ってふんわりした言葉で、あまり議論にならないですからね。

文化や習慣はどんどんアップデートせよ

手嶋:あといくつかだけ話して、後はラップアップして終わろうと思います。じゃあ、32ページ。これはある時突然、福島さんが言い始めましたよね。

福島:週次定例で話したんですけど。

手嶋:何か当時、危機感があったんですか?       

福島:僕と牧迫というバクラクを立ち上げた執行委員が、とある業務で、当時本当に何もわかっていない状態で適当に決めた事柄があったんですよね。

手嶋:決まらないと進まないから。

福島:そう。それは後から入ってくるメンバーに改善してほしい前提で仮で決めたことだったんですけど、それが1年くらい経っても残っていて、かつそこが結構な業務負荷になっていたんですよね。

受注率の改善につながっているのかとか、カスタマーサービスの向上につながっているのかも疑問だったので、思い切ってやめてみようと。結果、受注率は何も変わらなかったし、むしろ良くなって。業務オペレーションも効率化して。

適当に決めたものって慣習化するんだなと、その時強く感じて。新しく入ってきたメンバーからすると、変えていいのかどうかわからないじゃないですか。このプロセスがあることによって何かいいことがあるんだろうみたいな。

僕と牧迫は「無くしてくれていいよ」という気持ちで“とりあえず”決めたものが、絶対化されて残っていくのが嫌だなと感じたんです。でも、それってお互いが同じ期待値でいないと「勝手に変えたら怒られるかもしれない」とか「なんで勝手に変えたんだ」みたいなことが起こってしまう。だから「そうじゃないよ」って伝えたかったんですよね。

1年で半分以上が新しいメンバーになって、それぞれがそれぞれの文化ややり方を持ってLayerXに入ってきているので、「アップデートして変えていいんだよ」というメッセージを出そうと思いました。実際、このメッセージを出してから、バンバン変わるようになったなと感じますね。いい意味で。

手嶋:後から入ってくると、誰か凄まじい能力を持った人があらゆるパターンを吟味した上で決めたことなんだろうと思うかもしれない。

福島:しかもこれだけコストをかけてやっているんだから、正しいだろうみたいな。そうじゃないよというのが、このスライドです。

手嶋:何か決めないと進まないから適当に決めることがあるよ、ということがまず前提にあって、なのでどんどん変えていかないとまずいよということですよね。

福島:あと顧客層が変わっていくなど、外部環境の変化もありますからね。その瞬間が正しくても、気づいたら変わっちゃったよねみたいな話もあると思う。

手嶋:聞いていてわかる通り、羅針盤の1枚1枚は、あるシーンに何か気づいたときに福島さんを中心に書き溜めていったもので。これを書いてから始めたことってほぼなくて、何か課題に対して、経営的な打ち手やメッセージをスライドにまとめておく流れなんですよね。

福島:そうですね。

羅針盤の本当の使い方は……

手嶋:全部実務から来た考え。ミッションは当然前提だったりはするけど、実務を通じながら磨いていって生まれた考え方なので、我々の中では「あの時のあのシーン」とか「ああいうことがあったよね」みたいなエピソードが思い出されるのもいいことなのかなと僕は思っています。

他の会社の方も聞いているので、もし自社に取り入れるとしたら、このドキュメントそのままコピーしてもほぼ意味がないので、会社の中にある現象に目を向けて、その現象を解決しにいく。解決しつつ、こういうスライドを導入していくみたいな流れでやっていくと浸透しやすいのかなと思いますね。

福島さんと松本さん、何かコメントありますか?

松本:LayerXの羅針盤から盗めるものもたくさんあると思っていますが、逆にいろんな会社の羅針盤を見てみたいと思っていて。これを皮切りにいろんな羅針盤が発信されて、僕らも吸収したいなと思っています。

後はいろんな文化を混ぜ合わせたいので、ぜひLayerXに興味を持って入社していただいて、一緒にこの文化をさらにアップデートしていきたいですね。

手嶋:ジーンプールですね。じゃあ福島さん。  

福島:まだぶっちゃけていないですよね。最後の最後にぶっちゃけるところは……

手嶋:そうですね。なんで今回こんなスペースを開いたかというと、ぜひ採用したい!という(笑)。とりあえずは、カジュアル面談。Meetyもたくさん出ていますし、TwitterのDMとかコーポレートサイトの採用窓口から応募してほしいと思っています。ちょっとでも応募してやるかみたいな方がいたら、ぜひアクションをしていただけたらなと。では福島さんどうぞ。

福島:例えばカジュアル面談を申し込んでも、何を話せばいいかわからないところって正直あるじゃないですか。「LayerXってどういう会社なんですか」って聞いても「Be Animalで〜」とかふわっとした抽象度の高い行動指針の話をされていても困りますよね。そういうときに、「羅針盤に予算の話がありましたけど、具体的にはどういう使い方をしているんですか?」みたいに活用してもらえたらと思います。

手嶋:「羅針盤のこのページについてちょっと話させてもらえませんか?」みたいに使ってもらえたらという感じですね。ではそろそろ、お昼休みも終わりますので、これで終わりたいと思います。ありがとうございました!


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