「専門領域を極めるだけ」ではない。BASE社CFOが考える、事業成長に資するコーポレート人材とは
バクラクビジネスカードをはじめ、バクラクシリーズを活用いただいているお客様に、LayerXの経営陣がインタビューする連載『バクラク顧客探訪』。
今回は、ネットショップ作成サービス「BASE(ベイス)」、購入者向けショッピングサービス「Pay ID(ペイ アイディー)」をはじめとしたウェブサービスの企画・開発・運営を行うBASE株式会社の取締役CFO・原田健さんに、株式会社LayerX取締役コーポレート担当の横田淳がインタビューしました。
株式会社MIXI、株式会社フリークアウト(現:株式会社フリークアウト・ホールディングス)などで経理部門のマネジャー職や管理部門のマネージャー職を経験し、BASE社では取締役CFO/上級執行役員を務める原田さんが考える、事業成長に資するコーポレート人材に求められるマインドや視点とはーー。
コロナ禍で事業伸長、コーポレート部門は3名から30名へ
横田:まず初めに原田さんの現在の担当領域を教えていただけますか。
原田さん:大きく分けると、コーポレートとHRを担当しています。今回の対談テーマであるコーポレートに関して言うと、法務や総務、ガバナンス、内部監査、アカウンティング(会計)、ファイナンス(財務)、IR、あとは広報・PRも担当しています。
横田:かなり幅広く担当されていますね。
原田さん:そうなんです。2015年にBASE社に入社した当時は、コーポレート部門は私のほかに広報と秘書が1名ずつでしたが、現在では30名程の体制です。これは全正社員の1割程度の規模です。
横田:事業が成長していく中で、コーポレート組織の体制はどのように変化してきましたか。
原田さん:入社当時は、事業計画的にもあまりコストをかけられない状況だったので、基本的にコーポレート部門のすべてをアウトソーシングしていました。先ほど述べたように、3名程度の少数精鋭で、部門のあらゆることを垣根なく行うゼネラリスト的な動きをしていました。
BASEは2019年に上場したのですが、その後、新型コロナウイルスが流行しました。その影響でECの需要が高まり、組織を整備する前にすごい勢いで事業が伸びた上に、その時期は働き方もフルリモートワークになったんです。
戦略的に何かできたというよりは、フルリモートワークでも対応できるように紙でのやり取りが多かった請求書や経費精算をデジタル化したり、事業の伸びに追いつくように体制をつくったりしました。
事業を加速するためには、自分の専門領域に閉じていてはいけない
横田:デジタル化も進んでいるとのことでしたが、今のコーポレート部門の体制で課題に感じていることはありますか。
原田さん:前職の頃から考えていたことですが、関係する部署が問題点をはやい段階で検討できる仕組みづくりは課題です。
たとえば、サービス側が新規の案件を始める際には、最初に法務に相談しますよね。その法務の時点で、会計や税務など法務以外の論点も見つけられれば、はやくから経理に連携・相談できるんです。ですが、話が進んだ段階で指摘が入ってしまうと、余計に時間がかかってしまう。
経理側も自ら契約書を確認しにいくことは多くないので、結果、仕訳を計上する段階で問題が見つかるということもあります。
横田:そうですね。私もサイバーエージェント時代は法務にいて最初に相談を受けていましたが、後から経理の人に問題点の指摘を受けることがありました。
私の場合は、税理士講座を受けたり締め作業を経験させてもらったりして、経理の視点を身につけることに加え、経理部門と密に連携するよう仕事の仕組みを変えていきました。その方がお互いやりやすいんですよね。
いわゆる人事総務系、リーガルガバナンス系、ファイナンス系の三つををうまく繋げるような組織づくり、仕組みづくりができるとスムーズにいきます。
原田さん:そうなんです。上場前は人数も少ないし、相談しないと物事が進まないので、勝手に連携ができていました。しかし、どんどん人が増えてきて、作業も分担していくと、仲が悪いわけじゃなくても専門性があるゆえに閉じてしまうところがあると思います。まずは専門領域を確立することが必要ですが、そのうえで隣の領域の視点を持つマインドと知識をつけていくことも大事だと思いますし、仕組み化も考えていきたいですね。
“慣れ”を超えて挑戦し続ける組織に
横田:原田さんがBASEのコーポレート組織づくりにおいて意識されていることはありますか。
原田さん:自分の年齢が上がるにつれて、無意識のうちに組織の平均年齢も高くなってきているので、若手メンバーを採用することを意識しています。歳を重ねるとどうしても慣れが生じやすくなり、組織が硬直化すると感じていて。若手メンバーがどんどんチャレンジできる組織でありたいと思っています。
横田さんも同じ認識かもしれませんが、2000年代から20年ほど経ち、ウェブ業界や、スタートアップ、ベンチャー企業の位置付けが変わってきました。結果として、業界に入ってくる人のスタンスも変わってきていると個人的には感じます。昔は、何か成し遂げたい人がリスクをとって入ってきていた。
横田:ベンチャー企業にいくことについて、「自分はリスクをとっている」という意識がありましたね。だから、チャレンジしないとリスクをとってこの業界にきたことが正当化できなかった。今の若い人にも、もっとチャレンジしてもらいたいですね。
原田さん:そうですね。どんどん新しいテクノロジーが出てくる時代なので、弊社のようなウェブサービスを提供している会社は、年齢もそうですが、スタンスとしてそうしたチャレンジする人が活躍できる環境じゃないと、組織が強くなっていかないなと思いますね。
横田:実は、かつていた会社で、弊社が提供しているバクラクに似たようなサービスを紹介してもらって却下したことがあったんです。今思えば、もっと便利になったかもしれないのですが、これまで問題なかったものを変えるのは勇気がいることなんですよね。
今はバクラクを知っているから、というのもありますが、「やり方をちょっと変えてみよう」と考えたり、新しいツールも「まずは検討してみよう」とより強く考えるようになりました。
「業務が非効率になっている問題の本質」を見極めることが重要
横田:BASEでは、バクラク申請とバクラク請求書受取に加え、バクラクビジネスカードも導入いただいていますが、新たにツールを導入する際に意識されていることはありますか。
原田さん:昔は自分が実務も担当していたので、ユーザー視点でサービスを見ていました。今は実務は各担当に任せているので、どう便利になるのか、コストに見合っているか、ガバナンスの点で問題はないかといった点を重視していて、担当者が明確に整理できていれば、「やってみたら」ということで承認しています。
また、コーポレートが便利になるだけではなく、従業員が使いやすいという点も重視しています。
横田:バクラクシリーズの使い勝手はいかがですか。
原田さん:課題が解消されたと感じるのは、稟議を上げて、予算の承認を取ったあとに支払申請と紐づけられる点です。
たとえば、弁護士報酬など支払金額に変動がある場合、Excelなどで集計して、承認済みの金額を超えていたら再申請を依頼していたので、手間がかかっていました。
バクラク申請の画面で確認すればひと目で予算の消化率がわかるので楽になりましたね。
バクラクビジネスカードについては、無料で用途ごとに発行できるので、カード決済が必要になるたびに担当者が入力する手間がなくなっています。
横田:バクラク申請を利用いただいているほかの企業さんからも、予算の消化率がわかる点は使いやすいとお褒めいただいています。バクラクビジネスカードについては、利用可能な従業員・金額を管理部門が指定したり、すぐに変更できたりする点も評価いただいていますね。
原田さん:現状はバクラクシリーズである程度集約できて便利になっていますが、世の中にはいろんなツールがあってそれぞれいい点があります。何が課題になっているのかを考えずに導入していくと、どんどんツールが増えていってしまう。
ですから、ツールの導入前に「なぜ今は非効率な業務になっているのか」という問題の本質を考えるように伝えています。そうしないとツールを変えても意味がないんですよね。
横田:そもそもツールの問題じゃないこともありますよね。ルールを変えれば済むこともあるので、自社の状況によって最適なやり方を考える必要がありますね。
事業に投資する役割とブレーキをかける役割を使い分ける
横田:原田さんが急成長しているスタートアップのCFOとして心がけていることを伺えますか。
原田さん:私は、「取締役」、「コーポレートを管掌する上級執行役員」、「CFO」と三つの立場があり、それぞれやるべきことが違うと認識しています。世間一般ではひとまとまりに考えて、区別されないことも多いかと思いますが、私は意識して立場を使い分けています。
取締役という観点ですと、ほかの取締役や上級執行役員が管掌している領域に対して、適切なガバナンスをかける。ほかの役員がやっていることが正しいのか、合理的なのかをチェックする牽制役。
上級執行役員としては、自分が管掌しているコーポレート部門の業務を適切に遂行して、会社や事業の成長に寄与しているか。ここの執行責任があると考えています。
CFOとしては、資金調達はもちろん、事業計画を立て、計画通りに遂行されているかモニタリングして、投資家に説明をし、株価を上げていく。このように、それぞれ結構役割が違うと思っています。
事業に投資して伸ばしていく役割と、ブレーキをかける役割があり、攻めと守りのバランスをうまくとっていかなければならないと考えています。むずかしいことですが、結局は会社が成長しないと意味がないので、そのために何が最適か、ということは常に考えています。
横田:私も複数の役割があるので、会議体ごとに事前準備をして、意識を切り替えて臨むようにしています。最後に、コーポレート組織はこういうチームでありたいといったお考えはありますか。
原田さん:「そもそも何のためにやってるのか?」を考え抜けるチームでありたいですね。
安定してくると、過去につくったルールを運用するばかりになってしまい、「何でルールがそうなっているのかはわからない」と、思考停止に陥ってしまうことがある。ですが、事業や会社のフェーズに合わせて求められるものは変わってきます。
そうなると、事業や会社にブレーキをかけてしまうので、事業と会社を成長させるためにコーポレートとして何ができるか、自ら考えられる組織にしたいですね。
組織を強くしていくためには、今いるメンバーをしっかり育成するのはもちろん、採用も頑張っています。コーポレートなので、各領域の専門性があることが前提になるのですが、加えて、自分の専門領域に閉じず、周辺領域の視点も持てる人にぜひ来てもらいたいなと考えています。
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