「誠実であること」を大切に。マイベストCFOが語る事業成長を阻害しない経営管理体制の構築方法とは
バクラクビジネスカードをはじめ、バクラクシリーズを活用いただいているお客様に、LayerXの経営陣が聞きたいことをインタビューする連載『バクラク顧客探訪』第二弾。
今回は、2016年にサービスを開始し、現在は日本人の約4人に1人が利用する国内最大級の商品比較サービスへと成長したサービス「mybest」を運営する株式会社マイベストに訪問しました。
お話を伺ったのは、取締役CFOの木本裕美さん。決算は年1回、規程も整備されていなかった状況から、LINEヤフー(当時はZホールディングス)との資本業務提携を経て、IPO準備に向けた体制整備を進めてきたプロセスや、コーポレート体制へのこだわりまで、株式会社LayerX事業部執行役員の川口かおりが聞きました。
「より自分の力で社会にインパクトを与えられる仕事を目指して」大手証券会社からの転職
川口:木本さんは2019年12月にマイベストに入社されていますが、まずはスタートアップに入社を決めた経緯を伺えますか。
木本さん:私は新卒で大和証券SMBCに入社し、投資銀行部門でコーポレートファイナンスを9年、経営企画部門で経営戦略を策定する仕事に2年半ほど従事していました。
仕事に励んでいましたが、もっと自分の力で社会にインパクトを与えるような仕事をしてみたいと考えていたときに、大和証券の同期入社だった吉川(マイベストCEO 吉川徹)が、「うちの会社に遊びに来てよ」と声をかけてくれたんです。
吉川が2016年10月にマイベストを創業して、3年ほど経ったタイミングでした。「家も近いし、友達の会社をちょっと見にいこう」くらいの感覚でしたが、そこで吉川から「うちに来て一緒に会社を作ってくれないか」と誘ってもらいました。オフィスではスタッフが家電や脱毛器、化粧品などいろんなものを真剣な顔で動かしたり試したりしていて、すごく活気があって。
消費者の「選ぶ」を手助けすることで社会を変えようとしているビジョンや、「マイベストは世界を目指す」という吉川の思いに共感し、新しいチャレンジをする気持ちで入社しました。
年1回の決算、給与支払フローの整備からLINEヤフーとの提携まで
川口:大手証券会社と創業して3年のスタートアップとでは、大きく違う世界だったのではないでしょうか。
木本さん:当時の社員数は70名ほどで、会社としての体をなしているけれども、管理は追いついていない状況でした。給与支払いの日付も人によって違い、ミスも生じていたんです。まず毎月きちんと全員に給料を支払えるようにするところからのスタートでした。
また当時は、株主は吉川一人だけなので株主総会も開く必要がなく、決算は年に1回だけ。年度末に締めて数ヶ月後にようやく売り上げや支出がわかるという状態でした。そこから月次決算をおこなえるように、経理システムを導入して仕組みづくりを始めました。
川口:2020年10月にLINEヤフー(当時はZホールディングス)と資本業務提携されたんですよね。
木本さん:入社1ヶ月後ぐらいに資本業務提携の話が本格化して、会社の仕組みづくりと並行しながらデューデリジェンスや契約の交渉を行っていきました。 なんとか提携をやり遂げたのですが、経理や管理だけでなく人事を担当していた時期もあって、本当にハードでした。
その次のフェーズとして、いつでも上場できるように上場準備をしようということになりました。提携する上でそれなりに会社のベースを整えましたが、上場するには管理の仕組みが全然足りておらず、内部統制の仕組みを整えていかなければなりません。
ただ、社員数も100名を超えたところで、採用や組織づくりが大きな問題になっていたんです。なので、内部統制も大事なのですが、それよりもまず社員が安心して働ける会社にしないといけないと思いました。
社員はスタートアップに入って自分の人生を賭けて仕事をしていくわけですし、社員にはサービスを作っていくことに注力してもらいたいので、生活に不安を覚えるようなことはあってはならない。なので、人事制度や管理体制を整えて、社員に信頼される会社組織にすることを目標に管理部門を作っていきました。
内部統制はあくまでも型。本質的な経営管理体制を追求し、ステークホルダーとも議論
川口:スタートアップもどこかの段階で内部統制は重要になってきますが、制約の少ない伸び伸びとした環境で成長してきた経験があると、ルールが増えることに対して事業成長とのコンフリクトが起こることもあるかと思います。その点はどのように対応されてきましたか。
木本さん:必要だと思えないような仕組みを現場に押し付けてしまうと、成長を阻害するというのは私たちも感じていました。なので、効率化のためにその仕組みが必要だということを、現場が理解できるものから導入していきました。
たとえば初期の頃は、現場が何かを購入する場合にすべてSlackで社長に稟議申請をあげて、社長が承認しないと消しゴム一つ買えない仕組みでした。その状況だともう現場がワークしないわけで、稟議フローとバクラク申請を導入しました。こうしたケースは現場の課題を解決する仕組みなので理解を得られますよね。
監査法人等外部からの指摘があった場合でも、言われたからやるのではなく、どうしたら自社にあった仕組みとして導入できるかを徹底的に議論しています。
代表も「それは本当に必要なのか?」と追求するタイプなので、「監査法人や証券会社が必要だと言っているからやらないといけないんです」といったコミュニケーションは通用しなかったですね。
提案に対して「当社はこうやり方でやっていて、こちらの方が効率がいいのでこの仕組みにしたい」と交渉をして認めてもらったものなどもありますし、提案を受けて改善していったこともあります。
川口:やはり吉川さんも木本さんも証券会社で企業を見てきた経験が生きていますよね。本質的な経営管理のあり方や、事業成長に必要なことを考えているからこそできることだと感じました。
木本さん:そうですね。内部統制というのは企業としての箱のようなものだと思っていて。もちろんルールに則って作らないといけませんが、あくまでも一つの型なので、その中身は、会社のフェーズや業種、ポリシーなどによって、やり方も違えば細かいルールも変わってくると思うんです。私たちもマイベストに必要な内部統制とは何かということを深く検討し、今もブラッシュアップしています。
毎月約5,000件の仕訳処理が発生。業務負荷とミスを大幅削減した秘訣
川口:コーポレート組織の体制や効率化のために取り組まれていることについても伺いたいと思います。現在のコーポレート組織の体制はどのようになっていますか。
木本さん:入社してから4年がたって社員は200名ほどに増え、私が管轄する管理部門は今、経理2名と、経営管理や法務などで2名、またアルバイトさんの力も借りてやっています。
親会社との連結決算対応や、予実管理などの経営管理全般、情シス、カスタマーサポートなどかなり幅広い業務に、私と4名の社員で分担して取り組んでいる状況です。その人数でよくやれているねとは言われますが、いろんなシステムを駆使して、少数精鋭でやっています。
川口:いろんなツールを試されて、現在の筋肉質な仕組みを整えてこられたと思いますが、昨年、バクラクを導入いただいた経緯についても教えていただけますか。
木本さん: 当社は商品を実際に購入して比較検証する事業モデルなので、ものすごい数の商品やサービスを購入します。毎月5,000件ほどの仕訳が発生し、合計の購買費用は数千万円になります。
バクラク導入以前は、現場が商品の購買申請を一つひとつSlackであげ、社長が承認し、経理が支払い処理を行うというフローだったので、抜け漏れなども発生し、負荷がとても大きかったんです。
基本的には購買部門であるオペレーションチームが購買を行っていますが、コンテンツ制作メンバーひとりひとりにもバクラクカードを発行し、申請から商品の調達がスムーズにできるようになりました。
購買申請と領収書をカード明細に紐づけて管理できるようになったこともあり、体感では負荷が半分程度に減っています。
また他社ツールではできないことだと、バクラク申請では、承認した予算の消化率を見ることができるので、現場も予実管理の意識を持てるようになる点はメリットだと感じています。
CFOとして大切にしているのは「誠実であること」
川口:バクラクを存分に活用いただき、ありがとうございます。かなりハードな環境で体制の構築をされてきたと思いますが、木本さんがCFOとして最も大切にされていることは何でしょうか。
木本さん:私がCFOのコアとして大切にしていることは、「誠実であること」です。
CFOは、フェーズによって役割もやるべきことも変わってきますし、たくさんのステークホルダーに対して、社長に代わって交渉をまとめたり、一緒にリソース配分を考えたりします。そこに邪な思いが入ったり、信頼できない部分があったりすると、会社は成り立たなくなってしまう。
会社とはカンパニーであり、その言葉通り仲間が集まって信頼関係で作られているものですから、会社を守るためにも誠実であることが大切だと考えています。
川口:ありがとうございます。木本さんがマイベストの管理部門として大事にしていることはありますか。
木本さん:採用ページにも書いているのですが、私たちが求める人材は、作業者ではなく、「構築者」だと話しています。マニュアル通りに仕事をするだけでなく、マニュアルを作る人であり、仕組みを作る人です。協働しながら一緒に作っていくという「Cooperation」のマインドが社内に浸透しているので、このカルチャーは大事にしたいと思っています。
川口:最後に、マイベストの管理部門として、今後目指していくことについても教えてください。
木本さん:当社は今、人が何かを“選択する”時、プラットフォームとして当たり前に使われるサービスを目指して、日々改善を続けています。ユーザー目線を第一に比較検証するという点はぶらさず、ユーザーの信頼を獲得しながらさらに成長していきたい。私たちは小さく終わるつもりはなく、今後もユーザーのために投資をして大きなサービスとなり、世界を目指していきます。
そうした中で、私たち管理部門は今期、「事業成長を加速させる効率的・機動的な経営管理」という目標を立てています。サービス部門がアクセルを気持ちよく踏んで成長を加速していけるように、仕組みをどんどんブラッシュアップしていきたいと思います。
会社としてまだまだやるべきことはたくさんあります。信頼されるサービスを目指して日々改善を続けていきたいと思っていますので、全方位で積極採用中です。コーポレートも仲間を募集中ですので、ぜひ、力を貸していただきたいです。
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