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MAツール選択の決め手は「愛」。LayerXが取り組んだMA移管プロジェクトの全貌(#LayerXメンバーブログ)

この記事は、LayerXメンバーの書いたブログなどを紹介する #LayerXメンバーブログ としての投稿です。

今回は、バクラク事業部マーケティングマネージャーの松岡遥歌の記事を紹介します。


※ この記事は、B2Bマーケティング Advent Calendar 2023の記事です。アドベントカレンダーの記事や感想に関してはXのハッシュタグ「#B2Bマーケアドベント」をご覧ください!

はじめに

こんにちは、LayerXの松岡遥歌です。法人支出管理サービスの「バクラク」シリーズを提供しているバクラク事業部でマーケティングマネージャーを務めております。会社ではmappu-(まっぷー)と呼ばれています。
自己紹介については、以下のペライチをご覧ください。

ざっくりこんな顔と経歴の人間です 写真はとても盛れています、プロってすごいですね

この記事では、私がLayerXに入社して約1年のなかで最も注力したプロジェクトの1つ、バクラク事業部のマーケティングオートメーションツール(以後MA)の移管と経緯について、お伝えできればと思います。

この記事が、MAツールの新規選定や移管を検討されている方の一助になれば幸いです。あわよくば、バクラクのマーケティングOpsにご興味持っていただけると非常に嬉しい。

ちなみにLayerXのMA周りについては、約2年前に事業部長の牧迫がバクラク事業立ち上げ時のツール選定と設計を語っています。
「あれから2年、バクラクのMAはどうなったのか?」という続きの話でもありますので、もし興味&お時間がある方はそちらもぜひ御覧ください。

Notion AIさんによる要約はこちら。

プロダクト展開の拡大とともに、正しいデータの特定と管理が課題となり、MAの移管を決定。選択肢の中からSalesforce Account Engagement(旧:Pardot)に移管することを選択し、データの整合性を図り、Revenue全体での振り返りを可能にした。移管プロジェクトは約3ヶ月で完了し、商談獲得数の落ち込みはなく、生産性は向上した。この移管はデータ・ドリブン・マーケティングを始める第一歩であり、一層の叡智が必要とされる。

ほんまようできてはるわ、すごい

拡大するプロダクト展開、カオス化するMA/SFA

最初にバクラク事業について軽く説明させてください。
2023年12月現在、以下5プロダクトを展開する法人支出管理サービスです。
大変ありがたいことに、2021年1月のリリース以来シリーズ累計の導入社数8,000社を突破するなど、多くのご支持をいただいています。

リリースから2年半でこんなに増えました

プロダクトが増えること、お客様からのご期待が増えること、双方どちらも非常に喜ばしいのですが、事業の拡大とは裏腹にある悩みも大きくなっていました。正しいデータはどれ?問題です。

詳細は牧迫のnoteをご覧いただければと思いますが、セールス&マーケティング活動の基盤であるMA/SFAは、プロダクトリリース前から活用を始め、拡大期までのそれぞれのフェーズで、あえてスモールに検証と最適化を繰り返すことで、Revenue全体のKPIごとにツールを使い分ける運用になっていました。

改めて見るとなんともカオスです

・フェーズによって変わる前提で最初からガチガチにせず、柔軟にSaaSを繋げて使うことでコスト(時間・実費両方)を抑え、最初のトラクションを出すことに集中する。
・キレイに全部やりきるより「意図的に雑にやる」場面も時として必要になることも頭に入れて、引き続きサービス改善とオペレーションを進めて行きます。

引用:SaaSのリリース前後1年におけるMA・SFAのアレコレ

上記引用の通り、柔軟にツールを活用する意思決定は立ち上げ時において非常に重要です。リリース当初からがっつりMA/SFAを組むことは、スタートアップにおいて超重要なスピードを犠牲にしてしまいます。

ただ事業拡大のスピードがあまりにも早く、フェーズによって柔軟に変える前提の基盤は、個別最適化が進んでいきました。
結果としてマーケティングとインサイドセールスはHubSpotを活用し商談を獲得、フィールドセールスはSalesforceで既存顧客や案件管理を行うことで、本来一貫してみるべきRevenue全体のKPIが分断され、データの整合性にズレが生じていました

もちろん、HubSpotとSalesforceには強力な連携機能があり、それを存分に活用しRevenue管理をされている企業も多く存在するため、あくまで弊社の例でしかありませんし、商談作成や情報修正のルールを明確に決めきることが出来ていれば、違う未来もあったと思います。

しかし、新規プロダクトのリリースも見据える2023年3月、このままではお客様に対して適切なコミュニケーションを取ることが出来ないと判断し、MA移管を決定しました。

MA結局どれがいいの問題

MA移管を決定しました、と書きましたが、移管決定前に以下4つの選択肢を検討しています。

あくまで記載のメリット/デメリットは弊社観点のものです

自己紹介ペライチにも記載しましたが、これまで複数のMAを触ってきた中で明確に言えるのは、MA自体に関する機能そのものに、製品ごとの大きな違いはない、ということです。ただし、根底の思想に特徴があり、機能アップデートの優先度や活用方法に差分が出ます。

思想、つまるところ、プロダクト制作者の愛ですね
引用:比較表に惑わされないツールの選び方(マーケティングオートメーション編)

MAは実現したい理想に最も近いものを選ぶべきで、自社にとってどれがいいのか、を考えきれているかがポイントです。機能に差分がないからこそ、このMAを活用する目的はなにか、ユーザーとどういうコミュニケーションを取りたいのか、を意思決定者が描けているかによって、選ぶMAは変わってくると思います。

どれだけユーザーにプロダクトを届けたいという愛があったとしても、その想いを乗せる方舟の愛の方向性と一致しなければ、その想いは適切に届くことはありません。自らが届けたい愛の共感度が高いMAを選ぶべきです。

この点については、WACULさんより決定版とも言えるレポートが出ていますのでこちらをご覧ください。レポート内の比較表や思想で選ぶおすすめMA診断などは、これからMA選択にお悩みの方は必見です。

で、バクラクはどうしたのか?ですが、我々が選択したのはMAをSalesforce Account Engagement(旧:Pardot)に移管することでした。
先述した通り、今回の目的は「データの整合性をはかり、Revenue全体で振り返りができるようにすること」です。そのためには商談管理から成約までを担うSalesforceと緊密に連携することが求められます。まさにこれはAccount Engagementの思想と一致することから、この選択となりました。

初公開、LayerXのMA移管全タスク

移管が決まってから、移管を完了させるまでの猶予は約3ヶ月しかありませんでした。この90日の間にデータの移管やフォームやファイルの差し替えはもちろんですが、弊社基幹ツールとの連携、これまでHubSpot上で業務を行っていたインサイドセールスの運用も全て新しいフローに置き換える必要があります。
一般的には利用ツールや業務フローが変わると、一時的でも生産性は落ちるものです。インサイドセールスの生産性が落ちる=商談獲得数が下がることです。いかにこれを最小限に抑えるかも非常に頭の悩ませどころでした。

まず行ったのは、移管プロジェクトチームの発足です。
巻き込む部署や影響が大きいだけに、各メンバーの責任範囲を明確にすることが何より重要です。

発足時当初の体制図。最終的にはもっと多くのメンバーに協力いただきました

次に、移管プロジェクトのスコープをインサイドセールスとマーケティングの2つに分け、それぞれのWBSを作成しました。
このとき業務影響を最小限に抑えるため、業務フローに慣れる期間とQA期間を長く取ることを目的にISの業務移管を先に行いました。
QA期間においては、実際のISメンバーからnotionに疑問や改善要望を上げてもらい、Salesforce Adminと共に急ピッチで開発を進めていきました。

開発要望の冒頭のnotionページ。今見てもナイスなグラウンドルール

結果として移管前後で商談獲得数の落ち込みなどはなく、むしろ右肩に伸びるという異例の事態に。弊社のカルチャーを表す羅針盤の「型に投資する」意識が最大限に発揮された結果だったと思います。

以下が作成したWBSの一部です。
実際に作業を始めると、ここにはない非常に細かい作業も多く発生したのですが、改めて見るとこれだけの量をよく3ヶ月無事故で乗り切れたなとしみじみしてしまいます。

本当はもっとあったことに気づき顔面蒼白になったのもいい思い出

想像以上に長くなってしまいましたが、そろそろ終わります。

MA移管はスタート。データ・ドリブン・マーケティングはここからはじまる

あまりにも膨大な移管作業を終え、バクラク事業のKPIは全てSalesforce基盤のもとに統一管理されるようになりました。正しいデータはどれ?問題に終止符が打たれたのです。
一部ですが、現在のSalesforce画面でどのようなデータをモニタリングしているのかをお見せします。これらの項目の整合性がズレることなく、Revenueデータを一気通貫でモニタリングできるのって、控えめに言って最高です。

繰り返しになりますが、あくまで弊社の例であり、HubSpotでもやれることはとても多いです

検討期間を含めると約半年に渡ったMA移管プロジェクト。しかしMA移管はコンパウンド・スタートアップを掲げるLayerXにおいて、データ・ドリブン・マーケティングを始める第一歩でしかありません。

弊社代表の福島も言及していますが、"データとAIによって営業生産性が増幅される組織"の実現には、正しく統合されたデータがあってこそ。
今回ようやくその土台を築くことが出来た一方で、我々が目指す未来の実現にはより一層多くの叡智が必要です。

この誰も到達したことないデータ・ドリブン・マーケティングの極地に挑戦してみたい方、ちょっと気になる方は是非Opendoorでお話しましょう。

また直前も直前ですが明日12/13にはSmartHRさん、Ubieさんとの合同イベントがあります。ちょっと顔だしてみるかぁ位の感覚で、是非お気軽にご参加ください。

これまでご拝読ありがとうございました!
明日はEventHubマーケターのスーさんの「イベント2.0」です!


余談

繰り返しになりますが、今回の移管目的は「データの整合性をはかり、Revenue全体で振り返りができるようにすること」です。
これを実現するためにはMA/SFAのデータ連携が緊密に行われることも大事ですが、ユーザーに記入負荷をかけることなくリード情報をリッチに出来るか、も重要なポイントです。最後に画面アウトプットでお見せした部分ですね。非常にこだわって設計しているのですが、あまりにニッチ×Techナレッジにはなっているので、また別の機会にお話できればと思います。

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